人間が成長していく時、赤ちゃんはいつもニコニコしていて、何にでも興味を持ち、とても可愛い。普通に成長すると、10歳、つまり小学校4年生ぐらいまでは素直さ、明るさ、そして強い興味を持っている。でも、いわゆる思春期が来ると無口になり、反抗的になり、暗くなる。

思春期の子供は自分でも「昔はボクは明るかったのに、今はどうしてこんなになったのだろう」と不甲斐なく思う。

成長というのは一様には進まない。頭と体、内臓や筋肉、生理の発達はそれぞれが進んだり、遅れたりする。だから成長期にはアンバランスが起こり苦しむ。でも、20歳ぐらいになると段々、そのアンバランスがなくなり、明るく活発な青年に戻る。

このことと同じように社会の発展も途中でアンバランスになる。所得が増え、餓死する人などがいなくなると、生産が過剰になり、大気や水が汚れたり、大量に供給される食材に毒物が含まれるようになる。そして多くの人が不安に陥り、「大量生産すると環境が破壊される」と錯覚する。

有名は水銀で起きた水俣病の裁判の判決がその錯覚の典型例で、裁判官は「大量生産すれば環境は汚染される。だから過失がなくても汚染させた人に責任がある」という「環境汚染不可避説」をとって有罪にした。裁判官が文化系だったから、脱硝技術、脱硫技術など「大量生産しても環境は汚染されない」という事実を認識する力はなかった。

やがて、社会が成長を終わるとバランスが徐々に戻ってきて、「大量生産しても環境は素晴らしい」ということになる。ちょうど20歳の青年が輝いているようなものだ。

ところが、その頃になると「創造された環境破壊」が出現する。それが「リサイクルしないとゴミがあふれる」に始まり、「石油がなくなる」とか「地球が温暖化する」とか「異常気象になる」という類いだ。本当はそんなことはないが、専門家でなければ分からないことを利用して、脅し、税金や利権をとろうとする。

しかし、それも30年ぐらい経つと、すべてウソであることが分かるが、それでも脅され、洗脳された国民はなかなかその脅しから抜けることができない。そしてなんとなく不安を感じ、意味の無い分別やCO2削減などをやって暗くなる。

私はこのような科学的な間違いを直そうと、ずいぶん長い間、活動してきたが、人間の頭にインプットされた間違った考えは、簡単な事実も認めようとしないのでガッカリする。たとえば、「リサイクルしないと8年で廃棄物貯蔵所が満杯になる」と言われていたが、すでに25年たってリサイクルはされていないのに廃棄物貯蔵所は全く問題がない。50年前、「あと30年で石油がなくなる」といって大騒ぎをしたのに、10年前には「あと40年で石油がなくなる」と言い換えた。さらには、「石油は40年分しかないが、100年石油を炊き続けると温暖化する」という奇妙な説明がされても、それを奇妙に思わない。

石油は枯渇しないし、温暖化もしない。科学的には間違いないが、なかなか「温かい人生」の方に日本社会が向くのは時間がかかるかも知れない。

(平成27910日)