安保法案が衆議院で可決された後、まだ大学教授、大学生、そしていわゆる知識人を中心として「反対運動」が残り、国政が混乱している。

これほど奇妙なことはない。民主主義というものは一定の手続きをもっとも大切にするものであり、たとえ安保法案がかなりの問題を含んでいるとしても、そのために私たちは民主主義や政治活動の自由を失うわけにはいかない。

安保法案は、2012年の総選挙における自民党の公約・自民党圧勝→20147月の閣議決定(憲法を改正せずに集団的自衛権拡大)201412月総選挙・自民圧勝→20147月衆議院可決→反対運動激化・マスコミも反対にまわる、という経過をたどってきた。ほぼ100%、民主的手続きをとってきた。

それにも拘わらず、「衆院審議中に憲法学者3人が「違憲」といった」、「初めて政治に口を出してよいことを知った(大学生)」、「集団的自衛権は賛成だが、安倍政権の下では反対(民主党)」など民主主義を崩壊させる理由で、こともあろうに大学教授、大学生、そして知識人、マスコミが反対している。

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旧日本陸軍は上意下達の典型で、自由も民主主義もないとされているが、「マレーの虎」と呼ばれ、陸軍大将だった山下奉文さんはその遺書で、日本陸軍の欠陥は自由な議論がされなかったことを反省し、次のように言っている。

「自由なる社会に於きましては、自らの意志により社会人として、否、教養ある世界人としての高貴なる人間の義務を遂行する道徳的判断力を養成して頂きたいのであります。・・・(中略)・・・

従順と貞節、これは日本婦人の最高道徳であり、日本軍人のそれと何等変る所のものではありませんでした。この虚勢された徳を具現して自己を主張しない人を貞女と呼び忠勇なる軍人と讃美してきました。そこには何等行動の自由或は自律性を持ったものではありませんでした。」

日本の問題は、「虚勢された徳を具現して自己を主張しない人を貞女と呼び忠勇なる軍人と讃美してきました」ということに尽きると残している。まさに、現代の安保法制の反対運動や民主党というものの存在は、「虚勢された徳」としての「日本の空気と見かけ良心的と思われる言動」を具現して、「決定時に自己を主張しない」ことを賛美するということで、衆議院通過後の安保法案の反対運動がそれを象徴している。

なぜ、これが「温かい人生」に関係するかというと、「自分で考えたこと、自由な発言、合意された手続き」でことが進めば、陰謀も減り、突然バッシングを受けることもなく、明るく気軽な生活を送れるからだ。

現代の日本に「辛くないのに辛い人生」が多い一つの原因が、この安保法案反対にみられるように「闇でうごめく論理」が闊歩していることに他ならない。会社でも学校でも「会議では発言せず、個人の飲み方で細工する」という人が増えると、みんなが不幸になる。

かつて「貞女」と言われた淑女が陰でなにも言わなければよいのだが、表面で発言せず、自分の意思を表明しないので、陰や井戸端で大いに他人を批判するということがあった。それが自由で明るい日本社会を壊していることは確かで、その結果、辛くないのに辛い目にあっている人が多い。
現在の安保法案の反対をしている人は、「自分がイヤなら陰でもイジメる」という考えだから、なにか正当なことを言っているようでまさに「虚勢された徳」を言って社会を暗くしている。 

(平成27829日)