人類が誕生してから550万年、文明が大都市を形成してから1万年。人類は持続性を保って発展してきた。人口の増加によって狩猟採集による資源の確保が困難になった時、人類が陸地での栽培を発明しなければ人口は抑制され、発展は阻害されただろう。現在は陸上が栽培と飼育、海上が狩猟採集によっているが、やがてすべての地上の空間は栽培・飼育空間となると予想される。

 人口の増加と一人あたりの資源消費量の増大は、繁殖の抑制、発展の停滞、あるいは技術革新(社会体制革新なども含む人間の知恵の増加)をもたらす。しかし、時間は人間に「改善の本能」を発揮させ、絶え間ない革新を行う。これは生物というものそのものの性質に依存し、これまでも生物界に君臨した生物で進化が停滞した生物種は存在しない。

 絶え間ない革新を本性とする生物の社会には、時間とともに「灰汁」が蓄積するが、それは日頃の改善努力か、あるいは大革命によって精算される。従って、持続性は今後も継続される。環境の破壊や資源の枯渇は「現在の社会における環境と資源」を意味し、「近未来の社会の環境と資源」とは同一でないからである。

 もっとも可能性が高いのが技術革新による「灰汁」の解消であり、次に発展速度の低下、さらには人口の減少でも持続性は保持される。未来がどうなるかを、「技術革新が不可能である」とし、「発展速度を人為的に低下させる」以外に回避策はないという現在の一般的概念に合理的な根拠を見いだすことは難しい。たとえば、一般的には持続性を保つためには「節約」が一つの手法であると認識されているが、国による発展の差が存在する場合は節約は不可能であり、仮に節約が成功しても持続性を保つ時間が1割程度延びるだけで、本質的にはまったく変化はない。

(平成2773日)