第二次世界大戦に勝ってアメリカは世界の警察官として君臨するようになったが、戦争前はまだイギリスなどの力も強く、ソ連もスターリンの元で大国だった。もともとアメリカは孤立主義で、それほど世界戦略を持っていたわけではない。

まして広い太平洋を越えて日本、台湾、朝鮮、満州などにはほとんど利権もなく、関心も薄かった。このような中で、アメリカはなぜ、昭和16年夏から冬にかけて日本がどうしても妥協できない要求を繰り返し、戦争になってしまったのだろうか? 日本との戦争に勝つことは勝ったが、アメリカの若者の犠牲などを考えると、決して「戦争をしてよかった」という状態でもない。理由として言われていることを網羅すると、

1) ドイツと戦争したかったので、日本と戦争した、

2) ルーズベルト大統領が戦争が好きで、日本が嫌いだった、

3) 中国の利権が欲しかったが、日本が邪魔した、

4) イギリスやフランスから頼まれた、

5) 中国から頼まれた、

6) 正義と民主主義のため、

7) 行きがかり、

8) 「西」に行きたかった、

8つがある。それ以外はこれまで言われていないと思う。でもどれもこれも大国同士が戦争する理由になっていない。そこで理由の2)、つまりルーズベルト大統領の個人的趣味や性向に戦争の原因を帰そうとする研究者も多いが、たとえ大統領とは言え、一人の人の性向で500万人程度の犠牲を出すというのも奇妙なものだ。

ただ、これまで言われていなかった理由が一つある。それは「白人以外の国が力を伸ばしては困る」という白人国家の大きなコンセンサスが有力を考えられる。

白人は日本が台頭してくるまで、侵略のための戦争、悪徳のための戦争、大量虐殺、富の収奪、自由の束縛などあらゆることをやってきた。しかし、それは白人が有色人種に対してするときだけ正当化されるものであり、有色人種が有色人種に対して、またまさかとは思うが、有色人種が白人に対してやればそれはどんなに小さくても「巨大な悪」であるという考え方だ。この考え方は馬鹿らしいように見えるが、当時の白人と戦後の反日日本人に共通して見られる。

その点でルーズベルト、チャーチル、スターリン、ヒットラーはともに「歴史の子」であり、「白人同士なら良いが、有色人種は認めない」ということでは一致していたい。それにアジアでは中国が白人側についたので(朝鮮は日本と歩調を合わせた)、戦争が始まったというのがもっとも妥当な見方だろう。

ただ、歴史学者にはこのような見方は少ない。具体的な歴史の研究をしているうちに、その中の小さく決定的な事件や文書にその答えを見いだしてしまうからと思う。

(平成2763日)