「ジェンダー問題」という浮ついた用語がある。これは「なんでもヨーロッパの方が上だ」という白人コンプレックスが作り出した英語の日本訳で、ジェンダーという英語の直訳では「性差」、つまり男女の体や性質の差を考える運動や学問である。昔はウーマンリブといい、直訳すると「女性解放」である。

ヨーロッパの文化は狩猟文化とキリスト教の文化の混合でできている。だから、「女は男の所有物」という概念で、旧約聖書でもイブがアダムのあばら骨からできたという話もこのような考え方の延長線上にある。

それに対して日本は男女は「平等で役割分担が違う」というスタンスだ。ヨーロッパ系の神様のトップはすべて男性に対して、日本は国土を作ったのはイザナギイザナミの夫婦で、神様のトップは天照大神で女性、おまけに歴史上の最初の王様が女王卑弥呼である。神武天皇が男性なのは「戦いにでた王様(後に天皇)」だったからで、これは役割分担で男性が指導者になっている。

日本では女性は小説を書いても良いが男性は記録文書だけだったから、紀元1000年前後に、清少納言、和泉式部、紫式部などの文筆家を輩出しているが、ヨーロッパは17世紀のフランスまで待たなければならなかった。

女性参政権は1937年のトルコが最初でフランスは1946年である。また、夫が稼いできたお金を妻に全部渡す風習も日本が突出しており、1985年の京都府の調査では、日本人の90%の夫婦が財布は妻が握っていると答えている。

それでも、遅れたヨーロッパの男女関係を日本に持ち込み、いったん女性の権利を後退させてまた戦うという奇妙な状態が続いている。政府が進めている「男女共同参画事業」がその典型的なもので、その結果、日本の女性は家事と仕事で辛い思いをしている。

正しく男女の歴史を知り、戦争の無くなった時代の男女関係を遅れた文明のヨーロッパから学ぶのではなく、日本を模範とすれば女性の苦労は少しは減るように思う。

(平成2749日)