世界で1日1ドル以下(100円以下)で生活している人の割合を示した図がある。
当 然のことでもあるけれど、先進国はほとんどが極貧者はいないが、東ヨーロッパ、韓国、ポルトガルなどが先進国でも極貧者がある程度いて、社会がやや歪んで いることがわかる。東ヨーロッパや韓国は世界でも断然、自殺者が多いことでも知られているが、「極貧者がいないのに自殺が多い」という国が日本でもある。
次に「社会の均一性」、つまり大金持ちと貧乏人がいない国というと、極貧者のいない国の中では日本とドイツである。1日1ドル以下の人たちがいる国で貧富の差が少ないというのは多くの人は貧乏ということなので、あまり社会としては良いとは言えないだろう。
日本もこのところ、貧富の差が大きくなってきた。ある自動車会社の経営者は10億円も年俸をもらっているのに、200万円以下の人が30%近いということが心配されている。しかし、日本の今までの伝統もあって、世界的にみると貧富の差は小さいほうだ。
し かし、正規雇用と非正規の問題、男性と女性の問題などがあり、日本も楽観はできない。非正規雇用はこれまでの日本の成長が「正規雇用者の誠実な仕事」に あったことを考えると、「悪しきアメリカの例」を自民党政権がとったことが問題である。また、男性の賃金を抑えて生活を苦しくし、平均すると半分の賃金で 住む女性を「活用」するという社会も、わたしは日本の良き伝統とはあいいれないと思っている。
三番目は寿命だ。日本人の寿命が長いことはすでに知られているが、イギリス、フランス、スペイン、ギリシャ、ノルウェー、カナダ、オーストラリアと並んで(ほぼトップ)に日本がいる。ドイツはちょっとだけだが80歳に届かないので、「極貧者がいない、貧富の差が小さい、寿命が長い」という3つの点から評価すると、世界で「日本だけ」が当てはまるという画期的で喜ばしい状態だ。
そ れにも関わらず、日本は仮装社会になっていて矛盾は拡大している。このことを簡単に言うと、先祖や親の作り上げた良い日本社会の影響がまだ残っているけれ ど、今後の見通しはあまり良くない、それは「豊かさに甘んじて仮想的な現実の中に生きようとしている私たち」ということになるだろう。
対立軸のない政治、二世議員の進出なども「今は豊かだから油断している」ということのひとつの証拠のように思う。
(平成26年10月29日)