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2014年7月7日に沖縄を襲った台風8号は気圧が930ヘクトパスカル、沖縄の瞬間最大風速は53メートル(渡嘉敷島、79日)だった。洋上を進む台風の気圧は1960年代を中心に低いものが多く、次のデータ(このシリーズで使うデータは、断らない限り気象庁および同庁所属の測候所で、それ以外は人工衛星のデータは主としてNASA)から判るように900ヘクトパスカルを下回るものが多い。

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フィリピンなどは別にして日本の近くの海上で885ヘクトパスカルを下回る巨大台風は、1979年、1958年、1966年、1959年、1983年にそれぞれ870877880885885の最低気圧を示した台風があり、1958年から2014年までの56年間に5回ということになるが、時期が1958年から1983年の25年間に集中しており、その意味では5年から10年ごとに885ヘクトパスカルを下回る巨大台風が日本近海に存在していたことがわかる。

 

台風8号のように900ヘクトパスカルより気圧が高く930ヘクトパスカルクラスの台風は毎年、数多く発生している。また、台風は沖縄では島が多く上陸することはあまりなく、「島の近くを通る」と言うことが多いが、本土まで到達した巨大台風としては鹿児島や四国に上陸したものが多い。

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この表からも判るように、偶然に沖縄諸島や奄美群島に上陸した場合は、907908912922923924924925以下の気圧の台風が7回を数えているが、本土の場合は室戸台風の912(1934)、枕崎台風の916(1945)、第2室戸台風の916(1961)など有名な台風だけが記録されている。

 

21世紀では、2003年、2004年、2006年と925ヘクトパスカルを下回る巨大台風が沖縄に上陸していて、2014年の台風8号が仮に925ヘクトパスカルを下回るまでに成長したとしても(現実には最低気圧は930であった)、せいぜいBBCが報道したように「10年来」であって、気象庁やNHKが報じた「50年に一度」というのとはほど遠い(気象庁の発表は洋上を含めていた)と言うのが現実である。

 

なぜ、気象庁がこれほどまでに事実と違う発表をしたのか、NHKが過去の記録と比較せずに報道したのかについてはこのシリーズの終わりの方で整理したいと思う。

 

最近のメディアは取材もとに責任を転嫁するために、「脱法ハーブ」や「放射線防護服」に見られるようにもともと間違っているとわかっている用語をそのまま使用することが多い。「気象庁が言ったから」ということで記者が気象庁に「50年に一度という表現は正しいか? **年にはもっと大きな台風が来ているが」ぐらいの質問もしていないと思われる。

 

次に台風の被害をもたらす風の強さだが、2014年の台風8号の風は強く、沖縄で観測された最大瞬間風速は53メートルだった。この数値は過去に比べてどのぐらいだろうか?

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富士山などは別にして台風が接近しやすい沖縄では過去に85メートルから70メートルぐらいの最大瞬間風速を1956年から2006年にかけて8回経験している。つまり、70メートル以上の風は平均して6年に一度ぐらい経験していることになる。

 

気圧にしても風の強さにしても、せいぜい5年から10年ぐらいに一度、経験することを「50年」という表現を使うことによって、「異常気象」が頻繁に起こるという印象を与えている。

 

「台風だから少し大げさに言ってもよい」という感覚もあるが、それは気圧や風などの物理的な数値を間違える必要はなく、「今回の台風は強く、大きな被害が予想されるので、***に注意をしてください」とより具体的に行動のほうに重点を置く必要がある。

 

数値を大げさに間違う原因は気象庁や国土交通省、自治体などの縦割り行政の問題があるのと、危険をあおることによって予算を多く獲得しようという利権が考えられるが、これは後に検討したい。

(平成26年7月24日)