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地球温暖化に関係する論文に多数の間違いが見つかったのは2009年だった。きっかけはイギリスの大学の教授たちが交わしたメールの中に大量に「あれを誤魔化そう」とか「温度を変えたらよい」という内容とみられるものが発見されたからだ。

 

その後、地球温暖化でIPCCなどが主力情報として使っていたもので、故意かどうかは不明だが(普通は追及しないので)、少なくとも「科学的には間違い」として除外されたものがあり、それで結論も変わるまでのものがあった。

 

その一つでもっとも有名なものに「ホッケースティック図」と言うのがある。

 

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これがその図だが、あるアメリカの教授が「過去の調査と、それによってコンピュータで計算した近未来の気温の予想」で、図を見てわかるように「地球の気温はこれまでほとんど変化がなかったが、最近になって急激に上がってきて、これからも上がる」というものだった。

 

この図は「過去にないような気温変化があり、それはCO2が原因だ」という大きな根拠になり、それが日本でも新聞などで紹介され、この考え方や計算に基づき、IPCCは「気温が変化する原因の95%はCO2だ」という立場を取り、それが日本ではNHK、朝日新聞などが報道して世論を作り、温暖化に関係する税金や補助金、団体が多くできた。

 

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この図は、NHKや日本の新聞に繰り返しでて、「100年後に何℃あがる」とか「海水面が何センチ上がる」というデータになっている。しかし、ホッケースティック図をIPCCが技術レポートに正式に取り上げたことから多くの異論が出てきた。

 

もともと地球の気温の研究は長く行われており、氷の中の酸素同位体の測定で気温を推算することなどではノーベル賞も出ているほど、研究が多い。そのうちの一つで標準的なものが次のグラフで、主力は地球物理学などのこれまでの研究だが、そのほかに木の年輪、アルプスの氷の上下、ノルマン民族の活動などの歴史的考証など多くの研究からできている。

 

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だから、私のような科学者はホッケースティック図を見たときに「なに、これ?」と思ったし、IPCCという政治機関が出しているというだけで、日本のマスコミがホッケースティック図とそれに基づく温度上昇だけを報じるのにとても違和感を持った。

 

科学的なことというのは、一つの研究とか一人の論文などですぐ結果がでるものではない。難しいので一つ一つが「間違っている」とか「あっている」という判断ではなく(それはできない)、「多くの研究でおおよそこんなものだ。そう考えると今のところ矛盾はない」と言うことで決まる。

 

新しくホッケースティック図が出てきても、私たちはそれをすぐ拒否したり、非難したりはしない。「そんな計算もあるのだな。でもこれまでの研究結果と全く違うので、そのうち、著者からいろいろな考察(なぜこれまでと違うのか)がでるだろう」という受け止め方だ。

 

ところが、ここに政治が入り込み、この奇妙なグラフを「政治的に採用」してしまった。そして「100年後は・・」という誰にも真偽がわからない予測がでて、社会を覆ってしまった。

 

この論文は2009年のクライメートゲート事件を境に「おそらく間違っている」ということで表面にはでない。もし間違っていたり故意にデータを作ったとしたら、だんだん忘れ去られていくだろう。科学はウソをつかないから、時間が経てば正解に到達する。

 

でも、このグラフそのものや、なぜNHKなどが報道したのかについての説明はない。論文を書く人も間違えることもあるし、報道もいかがわしいものをつかまされることもある。でも間違えたときには、間違えを認めるという正直さが、不完全な人間にとってはいつも大切だ。

 

(平成26415日)