三菱マテリアルの四日市工場の熱交換器が爆発した。化学工場の事故でもかなり大きな方で、社会では会社へのバッシングが続いている。特にテレビを見ていると解説者がここぞとばかりに「そんな常識外れな」と日常の常識を化学工場の点検に直接、応用して見当はずれのことを言っている。
事故の責任は検察と裁判所がつけてくれるし、ビジネス上の損害も大きいだろう。その意味では社会が大きな制裁を科する必要はない。私はむしろ日本社会がこの事故から学ぶのは会社をバッシングするのではなく、再発防止と、日本の行く末だろう。
私はあるテレビのコメントで「今度の事件の本質は、日本が技術立国でいくのか、それとも料理と英語を選択するのかの大切な問題を含んでいる」と言った。つまり、現在、日本の技術者のレベルは毎年のように低下し、その歯止めがかけられないでいる。
戦後、日本の発展は「技術と自由貿易」の2つが両輪だった。戦前の軍事主体の政策を改め、平和のもとで国力を増やすには技術力が一番だったからである。その結果、1956年から1990年の34年間、日本は高度成長を遂げ、GDPは8.8倍になり、国民一人当たりの所得は欧米並みになった。
その日本が今後、どのような方向に進むのが良いか、まだ結論は得られていない。しかし、資源がない日本は「技術が資源」の時代に入り、技術の重要性がさらに強くなっている。また戦後の状態を見ると、世界一流の技術を作ることができる民族は、アングロサクソン、ゲルマン、そして日本民族しかいないこともほぼ間違いない。
今、日本の高等学校教育の理科教育は大学受験の影響を受けて崩壊し、物理などは履修者が10分の1という状態である。この状態では電気、機械を中心とする日本の技術陣は必要な数を卒業させることができない。
日本の産業を世界で競争できる状態にするには240万人の優れた技術者を要し、そのためには毎年、高校大学から11万人の技術者を輩出する必要がある。この数はアメリカの6万人に比べて人口比で実に4倍に達する。
高等学校で物理、化学の勉強をする子供が少なくなり、料理、英語の訓練が増えると、技術者のレベルは相当落ちるだろう。それが日本の将来の方向をよく考えての結果ならよいが、単に男女共同参画とかグローバリゼーションということだけを考えているので、極めて危険である。
このブログを書いているうちに愛知県の新日鉄住金の工場で火災事故が起こった。一つ一つの事故の原因はむつかしいが、やはりここまで技術者のレベルが下がると事故は防ぐことが難しいだろう。
男女の役割を固定する意図はまったくないが、かつて酒を酌み交わしては日本の未来を論じ、政治、経済が好きだった男性の「検討会」はほとんどその影をなくした。その代り女性が政治・経済・技術を論じてくれれば良いのだが、まだそこには達していない。
個別の正当性ばかりを強調する昨今、「真空地帯の日本」がこのまま崩壊していく予感がする。日本は当面、科学技術立国で行くのが最もよく、それには男性高校生の力が必要とされる。
男女が同権であることにまったく異議はない。だからと言って男性の特徴まで消してしまう必要はなく、国の力として活用すべきと考えている。
(平成26年1月18日)