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10年ほど前、パリ大学出身の才媛が日本の大学に来て助教授に任命されて、憲法論を学生に教えた。日本語はまあまあだった彼女だったが、まったく日本の学生に憲法を教えることができなかったという。その理由を私に話してくれた。

「だって、日本の学生って、政策も法律も自分たちが考えるものとは思っていないのよ。それに法令は自分たちの約束で、お役人はそれを守るために雇っているという感覚では無くて、お役人に監視されているという感じなの。だから、どうしても講義ができなかったわ」

2009年に民主党は「増税をせずに豊かな生活」という基本方針で、具体的な政策をマニフェストで示して選挙に勝ち、政権を取った。政権というのは「国民から委託された権力」だから、国民との約束を守らなければ選挙の意味が無い。

特に消費税の増税をした野田前首相は選挙運動の時に、「口で言ったことは守る。紙に書いたことは絶対守る。増税はしない」と言い、それは動画で残っている。その野田首相と民主党が消費税増税を国会で決めた。

だから、当然、決議は無効である。

私は戦争中に生まれて戦後に育った。そして日本は自由で民主主義の国であると習い、自由民主党を基本的には支持してきた。それは自由な社会、民主的な手続きが良いと思っているからだ。

もちろん増税というのがなかなか国民の了解が得られにくいものであることは承知であるし、時としてどさくさに紛れて実施する類いのものであることも知っている。でも今度の経過はあまりに酷い。物事には程度問題がある。

201212月の選挙で自民党が勝ったから増税は認められたということにはならない。増税の決議の時、自民党は少数だったのだから、決議のうち、民主党の票は反対票としなければならないからだ。

私は一生に一度でも、「政策や法律は国民が決め、法令は国民同士の約束」という社会に住んでみたい。そのためには、もっとも困難な政策でそれを一度でもやれば若い学生の意識も変わり、大きな意味で日本の将来を明るくするとおもう。

姑息な手段で言い訳に終始して、国を発展させることはできないし、子どもを幸福にすることもできない。

自民党は、消費税増税の決議を取り消し、再度、選挙をして公約に正々堂々と増税を掲げ、その必要性を国民に訴え、そして政権を維持するべきだ。それをやれば、なし崩し的にごまかして法律を通し、その言い訳に終始するという「政治的信念」を感じることができない「二世殿様党」から、ごつい政治家で構成された「自由民主党」になることができる。

最近、新聞が盛んに世論調査を行い、増税の可否を国民に聞いている。まるで世論調査が選挙より上位の意思表示のように取り扱っている。そういえば、2012年の増税議論の時に「マスコミは増税の特例を設けて、実質的に増税しない」という密約を結んだのだから、これも取り消して自由な報道に戻るべきだ。

政治と報道が正しく、誠意がないとこの国は発展しない。

(平成25826日)