国会で安倍首相がどこかの委員会に出席しなかったという理由で不信任決議を出し、そのために発送電分離などの法案が廃案となった。特に電力会社に不利な発送電分離の法案が廃案となった裏には、「原発を動かしたい」という政治的な力で首相が作戦的に委員会を欠席したとも見られる。
発送電分離は大東亜戦争の前の日本の電力体制で別に特別なものではない。ただし、現代の日本では、政治家が電力利権を失い、原爆を作ることができなくなるという点で大きな壁がある。
でも、安倍首相が計画的に委員会を欠席し、野党が選挙用のパフォーマンスで不信任案を出し、その結果重要法案が廃案になるというようなことが計画的かどうかは、記者クラブに所属し、一部始終を近くで取材できないと明らかにはならない。その意味で報道がもっとも大切な財産だ。
ところが、私たちは今、原発関係の報道を失っている。福島県の汚染状態や被曝の危険性すら報道されず、原発の状況は東京新聞、中日新聞しか報道がない。食材に至っては「安全」以外は言わないという報道になってしまった。
これも消費税のアップがあっても報道機関だけはアップしないという密約で報道は政府にまったく抵抗できなくなっている。お金をもらえば黙るのはあたりまえと思うかも知れないが、個人でもそんなに惨めな人はそれほどはいない。
お金をもらって魂は売りたくないという人が多いが、今の日本のマスコミは実に惨めになったものだ。これもNHKという「お金だけ」という大報道機関が存在するためだ。NHKは政府発表しか報道せず、自らは独立した記者を実質的にもっていないので、ニュースという名前のものを流しているだけで、本当の意味では報道機関ではない。
(平成25年6月30日)