低レベル廃棄物やクリアランスレベルなどの「これ以下なら放射性物質として取り扱わなくて良い」という基準はそれほど統一されているものでもなく、基準も場合によって異なります。でもおおよそ1キロ100ベクレル、110マイクロシーベルト程度で、普通の規制値の100分の1ぐらいにしています。

つまりセシウム137の場合、「これは放射性物質だ!」という基準は1キロ1万ベクレルで、普通は測定誤差やここに書く「総量規制」の問題があるので1キロ1000ベクレルで取り扱っていて、その10分の1(元の規制の100分の1)ということで1キロ10ベクレル以下のものを「普通のもの」として扱っています。

また、被曝という見地では11ミリシーベルトですから、その100分の1の110マイクロシーベルトを「気にしなくて良い被曝」としています。このように、100分の1などの数値が出てくる理由を説明したいと思います。

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ある毒物の規制が1キログラムあたり100ミリグラムだったとします。その毒物を扱っている工場が1キログラム10グラム(100ミリグラムの100倍)の毒物が入った廃液を持っていたとします。

担当者「規制値の100倍の濃度ですから、業者に持って行ってもらいます。費用は1キロ1万円しますから全部で100キロありますから、100万円かかります」

重役 「えっ!100万円! そんな金出せないよ。規制値の100倍なら海水をくみ上げて100倍に薄めて流せば良いじゃないか。だって100倍に薄めたら、法律は問題ないんだろう」

担当者「そ、そうなんですが。毒物だから規制値があるので、薄めて流すのはどうかとおもいまして・・・」

重役 「おまえ、なにを考えているんだ。会社のことを考えろ。環境団体じゃないんだから!」

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法の網の目をくぐって実質的な法律違反をする人が絶えないのはこの世のことで仕方が無いのですが、「善良な国民」というのは、法律の趣旨を理解し、できるだけそれにそって他人に迷惑をかけないということが大切です。

とくに国の首脳部やお役人は法律を守る立場の人たちですから、間違っても「趣旨に反する」ということをしてはいけないのも当然です。

瓦礫の問題では、1キロ100ベクレル以下というのは、規制自体に次の仮定があります。

1)放射性物質が出るのは、原子炉などの特殊な場所で、その場所を管理する人は誠意を持って日本国を放射性物質の汚染から守ることができる、

2)放射性物質の総量(一つ一つの「濃度:1キロ何ベクレル」)の他に全体で何ベクレルというのを把握できる、

3)世の中に広く散らばった後は規制値で良いが、発生源では故意に薄めるなどをしない、

ということです。ここでは「放射性物質を扱う人の倫理」が求められます。倫理は法律ではないと言われますが、公務員倫理法というのがあるように、社会の常識(毒物を薄めない)などは存在します。

また、「もの自体は規制値にかかるけれど、何かをくっつければ規制値の範囲外になる」という網の目のくぐり方もあります。たとえば、1キロ200ベクレルのものを「重たい袋に入れれば、袋全体では1キロ100ベクレルを下回る」とか「1キロ200ベクレルのものをトラックに乗せてトラックごとはかれば1キロ100ベクレルを下回る。」というような場合です。

このようなことをしてお役所にお伺いを立てれば「ダメ」と言われます。つまり、放射性物質のような毒物を含むものは、「そのもの自体やそれがある操作で高くなったとき(たとえば焼却してハイになった場合)」を考えなければならないのです。

法律ではややこしいのですが、一般家庭ならごく常識的なことです。たとえば腐っているものの、腐っていないものと混ぜれば良いなどと言うお母さんはいません。「危険なもの」は避けるのが「守る」ことの常識です。

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濃度(1キロ100ベクレル以下)という規制だけでは、悪辣な人が多く環境を守れない場合は、総量規制(全体で何ベクレルを漏らしてはいけない)という規制も必要となります。

福島第一の場合、私が常々言っていることですが、総量では80から90京ベクレルですから、これを日本人一人あたりに直すと80億ベクレル程度になり、日本人全員が死にます。

つまり「総量ではまったくダメな量」なのですから、瓦礫などの個別なものについては、「採取、運搬、取り扱い、貯蔵、空気中や土壌への拡散」などのあらゆる面で、「1キロ100ベクレルを超える事が無いように」というが環境を守るために絶対に必要です。

1キロ100ベクレル以下の瓦礫を燃やしたら、その灰は8000ベクレルになるとしたら、まず第一に法の目をくぐることになりますし、第二に放射性物質を取り扱うことができる施設で監視が必要です。

あらゆる面で瓦礫の搬出と焼却は、環境を守るという見地からはまったくダメで、これを政府が進めると国民は「法の目をくぐることは正しい」ということになり、日本は崩壊します。「増税はしないと言って当選し、増税に政治生命を懸ける」という政府ですから、このぐらいのことはやりかねないので、国民が「お前達は何をやっているのだ!」と主人として叱らなければならないでしょう。

 

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(平成24619)