なぜ、戦争が起こったのだろうか? なぜ、310万人も犠牲になったのだろうか? その一つの原因として「教育が国家に押さえられていた」ということが戦後日本の反省だった。そして、「国家から独立した教育制度」ができ、教師の独立性が目指され、民主教育が叫ばれた。

この原理はどこにあるのだろうか? 

大人の世界は汚れる。汚れの原因はある時には権力、あるときはお金、そして恨みや衝動だけのことすらある。権力を握った人間は初心を忘れ、国民を尊敬せず、地位にしがみつく。

その時間をできるだけ長くするためには教育は実に魅力的である。裁判官が人に死を宣言できるように、医師が他人の体を傷つけられるように、教師は子供の心に手を入れることができるからだ。

権力者は教師を手なずけようとするのは自然の勢いで、教室で事実とは違うことを教えるように強要する。やがてその子供たちは自分の奴隷になり、自らの子供を次の帝王につけることになるだろう。

かくして、戦争が起こり310万人が死んだ。戦争の原因は教育だけではないが、教育も一役買ったと考えられた。戦後の民主教育は日教組だけが進めたわけではない。東大の文化系学部もこぞって民主教育を支持した。

しかし、今、私たちが目指した民主教育は完成せずに終わりを迎えようとしている。すでに教育委員会というシステムは権力側にあり、子供を最優先する校長先生も絶滅寸前にある。あの元気だった先生方は今ではすっかり文部省に飼い慣らされ、疲れ切り、ただノルマを果たすだけのロボットと化した。

ただ、現在、教育を支配しているのは権力者(内閣)でも政治家でもない。官僚群である。官僚の論理は明確で、「国民の平均頭脳レベルは我々より劣るので、我々が国を経営しなければならない。だから税金をできる限り高くして、我々の自由になるお金を増やす必要がある。しかし、国民はお金を払いたがらないから、「税金が足りない」という状態を作らなければならない。それはばらまき行政だからお金をもらう国民は喜ぶ。つまり、「ばらまき行政→税金不足→赤字国債→将来のツケ→増税→ばらまき行政」というサイクルに入れば良いと言うものである。

私の分野でも、「ばらまき行政」と「教育現場での洗脳」は見事な連係プレーで進んでいる。「リサイクル教育→15000億円のばらまき→天下り組織設立→ほぼ全量を焼却→リサイクルしていると子供に教育」で子供に事実に反することを教えている。

現場の先生は「これまで子供にリサイクルを教えていた。今更、リサイクルが良くないとは教えられない」というジレンマに陥っている。「紙のリサイクル、割り箸忌避、ダイオキシンの毒性、地球の気温の変化、温暖化と南極の氷の増減」など、この20年間、もったいないとか節約という思想問題を科学に置き換えて、間違った科学を子供たちに教えてきた。

教学社というところが出版している高等学校社会の教科書に「温暖化したら南極の氷が融けて、ツバルという南方の島が沈んでいる」との記載があった。私は電話をして「科学的にも間違いで、事実と違うことが書いてあるので著者と話してみたい」と言ったら、「著者はご紹介できない」と言われるので、「それではこの文章の基礎となった文献を教えて欲しい」というと「環境白書」だという。

そこで、「教育は政治とは切り離されていなければならない。環境白書を参考にして教科書を作るのは良くない」というと、「ご意見は承りました」と言うだけだった。

教科書に記載されていることが事実かどうか、この作業は主として東大の先生が行う。東大には国立環境研究所などの文部省傘下の研究所などから多くの教授が送り込まれていて、いくら事実と異なっていても官僚の通りに記述された教科書ができあがる。

戦後、民主教育と検定教科書の問題が何回かあったが、不当な検定があったと言っても、思想の問題だった。でも、温暖化と海水面などという「純科学的なこと」でもごまかして子供たちにウソを教える体制は完成しているのである。
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御用学者が原発を解説するのも影響が大きいが、それは一時的なものに過ぎない。これに対して、{文部官僚―教科書会社―東大教授}が組んだチームは、学問的に正しいかどうかなど関心はなく、文部官僚は天下りを、教科書会社は売り上げを、そして東大教授は研究費をもらうために、子供たちにウソを教えてはばからないのである。

しかし、文部官僚も元はといえば純情で日本のために働こうと思った若者だったし、教科書会社は売り上げは必要だが、その基本は「良い知識を子供たちに」というのがもともとの目的だ。そして東大教授は自らの学問に厳密で忠実でなければならない。

お金と権限のため、老後のために魂を捨てる人たちではないはずだが、すでにダメだったのだろう。

これを正しくするのは、保護者の力と教師の自覚にある。戦後教育の確信が「国家は汚れるが、その汚れを子供につけてはいけない」というものなのだから、それを原発事故を契機に、もう一度思い出す時期だろう。

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(平成24423日)