原発事故が起こってから、政府、東大教授、専門家の多くが「自然放射線を11.5ミリシーベルトも浴びるのに、11ミリ以内など危険をあおるな」と言いました。でも、このような間違いをそのままにしておくと、その結果はもっとも被曝に弱い子供が犠牲になるだけです。

政府、東大教授、そして専門家が正式に訂正をする必要があることと、私たちは正しい内容を理解し、法律にそって正しく行動をするべきで、それが大人の責任です。

まず第一に被曝は「4階建て」ということです。一階は「自然被曝」、二階は「医療被曝」、三階は「核実験被曝」、そして四階が「原発被曝」です。特殊な時には五階(その他の被曝)があります。
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一階部分は、宇宙線、岩石、バナナなどからの被曝で、この被曝も有害かも知れませんが、日本に住んでいる限り年間1.5ミリシーベルトは仕方ありません。これを避けようと思ったら毎日、シェルターの中に入って生活をしなければなりません。

一階の上に二階があります。これは胸のレントゲンを撮る集団検診、胃の具合が悪くなったら胃のレントゲン、歯の治療で取るレントゲンなどで人によっても違いますが、平均すると年間2ミリシーベルトぐらいでしょう。

日本はこの医療用被曝が先進国の中でもっとも多いと言われていますが、その問題はまた別に考えてみたいと思います。でも、この一階、二階の部分は「日本で生活していれば仕方の無いもの」といえます。

その上に、三階があります。思い出したくないものですが、核実験の死の灰からの被曝です。原発事故直後、「核実験の時の被曝と同じ程度」などという東大教授もいて、混乱しましたが、これは二つの間違いがあります。

第一に、核実験の死の灰でかなりの人が健康を害しています。それは後に書きます。第二に、「核実験だからいいじゃないか」という論理は存在しません。人間の体に影響のあるものは「足し算」をしなければならないからです。

そして四階に原発被曝があります。すでに一階から三階までの被曝で年間4ミリシーベルトぐらいを浴びていますから、もし11ミリとすると、合計で5ミリ程度になります。

自然被曝、治療被曝、原爆被爆の三階までの部分は、どちらかというと「避けられない被爆」です。しかし原発被曝は、石炭火力でもやれば被曝しないので、「日本人が選ぶ被曝」です。そこで、原発から電気を30%ぐらいもらうなら、11ミリぐらいの被曝は仕方が無いというのが、今の日本の合意なので、それが法律になっているのです。これを「被曝の正当性の原理」と言います。

つまり、「被曝は損害」なので、その損害と同じメリットが必要です。いかに国家といえども、国民の健康を損なう権利はありません。「損害=メリット」の範囲なら法律も決められるのです。

間違ってはいけないこと:自然、治療、原爆、原発の被曝は足し算であること、
訂正すること     :今まで間違っていた人は訂正の公表をしてください。
政府、東大教授、専門家は自分のメンツより社会の安定を考え、「今まで足し算をしなかったのは間違い」と公表することによって、無駄な議論がなくなり、前向きの話が増え、子供の被曝が減りますから、自分のことより日本社会に貢献するようにしてください。
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【いくつかの事実】
第二次世界大戦後、大気圏核実験が行われ大気中にかなりの量のストロンチウムが放出された。このことによって、数10万人から数100万人の人が白血病になった。また日本でも白血病の増加は核実験の頻度と強く関係していて、年齢別に整理するとピークが観測される。

1950
年より結核予防法が施行され、全児童生徒にレントゲン検査が始まると白血病が急増した。そして1972年に全児童生徒から入学時だけに限定されたことによって、急激に白血病が減少した。健康診断による白血病の増加と考えられる。

タバコの喫煙率が低下しても肺がんは増加しているが、健康診断などによる医療被曝が増大すると肺がんが増える傾向にある。肺がんにタバコの影響は明瞭に見られるが、それより、医療被曝、自動車排ガスなどの影響の方が統計的には肺がんに強い関係がある。
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原爆実験によって大気中に拡散したセシウム、ストロンチウム、プルトニウムが多くの人に影響を与えたことは考えられます。このような現象は統計的に起こるので、一人一人の人のこと(「おれは大丈夫だった」)を強調するのは科学的ではありません。

医療被曝は「自分の体の健康を保つために仕方なく被曝する」のであって、それは「薬、手術」などでも同じです。「医療被曝だから安全」ということはありません。

このように被曝と健康についてはまだ学問的に不明な部分が多く(専門家が冷静に議論しても一つの結論にならない=学問ではない)、慎重に扱わなければなりません。特に、結核予防法によって被曝した児童が白血病や肺がんになった可能性が高いのですから、このような過去の経験をまじめに大人は考えなければならないでしょう。

私は今まで「11ミリは法律」と言うことだけにとどめて、一つ一つのデータを紹介しなかったのは、学問的に議論のあることを緊急事態で蒸し返すのではなく、とりあえずはこれまでの専門家の決定を尊重して子供を守りたいと判断したからです。

ともかく、「足し算」で考えてください。それは、原発被曝でも同じで、外部、内部、給食、瓦礫、運動・・・すべては足し算なので、自治体の人も「上司に怒られるから」というだけではなく、「市民を守る」と言うことから、「大丈夫」と言うときにはすべてを足し合わせて、その市でもっとも被曝感度が高い子供でも大丈夫という根拠を持って言って欲しいものです。

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(平成24418日)