地球温暖化はそのスタート自体がアメリカ農業団体の作戦で、学問とか環境問題ではないので、その中に知の侮辱があっても当然かも知れません。むしろ、世界中で日本がCO2を実質的に削減しようとしている唯一の国であることを考えると、「知の問題」として温暖化を取り上げること自体、知の侮辱のようにも思われます。

 

でも、人間の排出するCO2が地球の温暖化の主要な原因だと考えている科学者が日本に多いことも確かで、それが子供の教育や生活に大きな影響を与えていることも間違いはありません。

 

たとえば、NHKが映像を流したように「ホッキョクグマが暑いと苦しんでいる」とか「南洋の島、ツバルが沈みかけている」などというような「知の侮辱放送」は日本の子供に大きな影響を与え、結果的には「科学的事実など問題にしなくてよい」という思想を植え付けることになっています。

 

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温暖化報道では科学の基礎的な原理に反することが多かったのですが、その中でも特に「温暖化したら南極の氷が融ける」ということを聞いたとき、私は本当にガッカリしました。そして、「融ける」と思っている人にその理由を聞きましたら、「温度が上がったら氷は融けるんじゃない」と言われて、2度、ガッカリしました。

 

理科の時間に「融点」というのを教えるのですが、これは「物質は温度が上がったら融けるのではなく、融点で融ける」ということを理解させるのです。

 

ある意味では、この現象は常識外れでもあります。なんとなく普通に考えると「温度が上がると氷は融ける」と思いがちですが、水(氷)は0℃で、アルミニウムは660℃でというように物質によってある温度で融けるのであり、温度が上がっても融けないという基本的な概念だからです。

 

また、この場合はIPCCという国連の気候変動(温暖化)の機関が正式な報告書(わずか25ページぐらい)で、「南極の氷の温度は低いので(マイナス40℃)、温暖化しても融けない」と記載しているのに文献も見ないという二重の「知の侮辱」になります。

 

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私がある関西のテレビにでて「IPCCの書いてあることを紹介」したところ、「異端児・武田邦彦」と言われました。アナウンサーが「申し訳ないですね。異端児なんて言って」と謝ってくれましたが、私は「いえ、学者にとっては異端児はほめ言葉でもあります」と言いました。

 

しかし、「温暖化すると南極の氷が融ける」というのは、基礎科学から言っても間違いで、IPCCの文献でも否定されているのに、日本ではすでに「赤信号をみんなで渡ったので、それが正しい」ということになっているのです。恐ろしい社会ですね。

 

そしてやがて、科学的にも文献でも異なることが日本社会に定着すると、今度は科学的に正しいこと、知を尊重する人、文献をしっかり読んでいる人を「異端児」として社会から排斥しようとする・・・それが私がこのシリーズで言いたい「知の侮辱」なのです。

 

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(平成2427日)