文部科学省が給食に出す食品の汚染度の上限を「1キログラムあたり40ベクレル」という通達を出したら、多くの教育委員会からクレームが来て、取り消す騒ぎになっている。

 

このところの食品の安全に関する動きを見ると目を覆うばかりだ。最初に、500ベクレルの暫定基準値を決めたとき、「厳しい値を決めると食糧が足りなくなり、餓死者がでる」などという時代錯誤の意見がでて、高めに決まった。

 

その後、いったい暫定基準値を安全として食品を食べると何ミリシーベルトになるのかがハッキリしていなかったが、その後、「15ミリ」で決めたことハッキリしてきた。

 

でも、日本の法律は11ミリだから、根拠薄弱だ。「餓死する」と言っても日本の食糧自給率は40%しかないし、餓死が問題になる穀類自給率は25%にしか過ぎない。その100分の1ぐらいが汚染されたから、1%以下だ。だからちょっと輸入を増やせばそれで餓死者など出るはずもないことはハッキリしている。

 

そのうち、さすがに支えきれなくなって食品安全委員会は「一生で100ミリ」という奇妙な判断を出した。だいたい日本人の一生は80年だが、このような規制は「平均」ではなく「だいたいの人が生きる最大」を採らなければならないので、3シグマという統計を使えば96%、つまり100歳ぐらいになるから、11ミリを追認した形になった。

 

でも、今まで、原発作業員が「5年で100ミリ」ということはあったが、せいぜい5年である。0歳児に被曝したものを一生の合計で決めるという根拠を聞いたことがない。つまり、0歳児で100ミリを被曝したら、その影響が100歳にまで及び、0歳児の100ミリ被曝は安全で、その後100年で体内で処理できるなど生物の代謝からいってあり得ない。

 

この問題はむしろ、食品安全委員会が「1100ミリ」などと決める権限も実力もない。被曝量を決めるのは食品衛生の専門家ではなく、被曝医療などの専門家の参加が必要で、しかも国際的な合意を必要とするからだ。その点も議論されていない。

 

その後、「食品だけで11ミリで基準値を決める」と言うことになったが、これも奇妙だ。国際合意、文科省や経産省の指導は今まで一貫して「外部、内部被曝を合計して11ミリ」であり、ここで、「食材だけで11ミリ」と「値切り」するとはケチな話だ。15ミリからまともな数値に戻すなら「すべての合計が1ミリ」にしないと国際的にも通用しない。

 

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ところがさらにあった。文科省が「1キロ40ベクレル」としたが、これはセシウムだけならおよそ11ミリに相当する。私は「セシウム以外にヨウ素やストロンチウムの被曝もあるし、水は別勘定」ということで「ベクレルを100でわる」という計算だが、それともほぼ一致する。計算根拠は50年から75年の積算被曝量の計算からでるのだから、どの計算でも前提が同じなら同じようになる。

 

ところが、教育委員会からクレームがついた.そのクレームの理由が「児童の健康が・・・だから」というのではなく、驚くべきことに「測定器を買うお金がない」というのにはビックリした。原子力予算が4500億円あるなかで、わずか数億円しか要らない測定器を買うお金がないから子供を被曝させて良いという教育委員会のクレームは信じられない。

 

そうか! 測定器がないから規制値を下げるのに反対とは! それが教育委員会の実態なら15ミリなどなんでもないはずだ。また、メディアも「子供の被曝を311日以前の基準に戻さないのか」とか、「教育委員会はどのように考えているのか」などには全く興味が無く、単に経過だけを示している。

 

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子供の健康に関することなのだから、ドタバタは止めて、「子供の健康を守る」、「311日以前に、日本の子供を被曝から守った基準に戻る」ということで強く合意して欲しい。

 

(平成23123日)