リビアを長い間、指導してきたカダフィ大佐が「民主勢力」によってその地位を追われようとしている。日本の論調はフセイン大統領やビルマ政権の問題の時のように「独裁政権は悪」、「欧米は正義」という先入観の中にいる。
しかし、リビアに軍事介入をしたフランスをはじめとしたヨーロッパ勢は「良心に基づいて他国を支援した」のではない。国際政治はそれほど甘いものではない。特にヨーロッパはかつての植民地時代の甘い汁をなんとか少しでも取り戻そうと躍起なのである。
リビアには石油などの資源が豊富にあり、ヨーロッパとは地理的に地中海の向こうにあり、歴史的なつながりが強い。ローマがカルタゴを壊滅させ、エジプト王国を征服して以来、ヨーロッパはアフリカを「植民地」と見ている。
今でもそれは変わらない。ただかつては露骨な軍事力で征服したのに対して、現代は裏から工作し、支援し、利権を採るという形に変わっただけである。崩壊していく国を餌にしようとハゲタカが襲っているだけだ。
第一、「内政に干渉してはいけない」という不文律が世界に定着しているのに、「民主化支援」とか「大量破壊兵器の排除」などあらゆる理屈をつけて世界に飛び回っているのはアメリカとヨーロッパの軍隊である。
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さて、日本はアジアの国としてアメリカヨーロッパの200年以上の植民地支配に苦しんだ国々と同一の歩調をとるべきだ。それは「他国には干渉しない」ということに尽きる。この前、イラク戦争ではアメリカのウソ(イラクが大量破壊兵器を持っていて、フセイン大統領はケシカランというウソ)に乗ってイラク戦争を支持し、ウソがばれても日本政府や知識人は判断ミス、あるいは国民に本当のことを知らせなかったことについて謝罪も説明もしていない。
明治時代に独立を果たした日本が、うっかり欧米の植民地主義に巻き込まれて大東亜戦争を起こしたことについての「責任追及論」がこれほど強いのに、ことイラクやリビア・ビルマなどになると欧米側の植民地主義、覇権主義に賛同するというのはいかにも浅薄な考えだ。
この際、リビアについての報道、論評を「非植民地主義」のもとに行い、世界に日本の正義を示すべきだろう。
(平成23年9月2日)