中内さんが「主婦の店」を始めたのは、ずいぶん前のことだった。当時、私も中内さんが何を言っておられるのかということ自体がわからなかった。

 

当時の「小売り」というのは「儲けるためにやっている」ということで、多くの人は「商売人なら少しズルしても、できるだけ高く売るはずだ」と信じていた。

 

ところが、「もともと商品の値段は高すぎる」とスーパーの経営者が言い、大阪で飛び抜けて安い値段で売り始めたのだ。まさに、家計のやりくりに苦労しいる主婦の見方だったのである。

 

その後、中内さんのダイエーは大きく成長し、大量に現金で仕入れてできるだけ薄利で消費者に届けるということが当然のようになった。中内さんは偉い。私は彼の晩年を考えても日本の功労者の一人と思う。

 

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ところが、原発事故が起こって、流通の経営者の誰一人、中内さんのような人が現れていない。現在の食品の暫定基準は、1年20ミリシーベルトの内部被曝に相当する。

 

20ミリシーベルトというと、1年に400回の胸のレントゲンだから、それを我が子に浴びさせて安心しているお母さんは、私に言わせれば日本のお母さんではない。

 

だから、お母さん方は買い物に行くたびに心配している。

 

イオン、生協をはじめとして日本には有数の巨大流通が存在する。人数も多く、専門家もいる。「私のところは主婦の店です」と宣言し、「1年1ミリシーベルト相当の食材しか売りません」と言う力はある。

 

でも、現在の流通には「中内さん」は見あたらない。出でよ!中内さん! 流通は常に消費者の方を向いてこそ、流通人の魂だ。

いでよ!現代の中内さん!(音声付き)

 

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(平成23816日)