子どもの被曝量を1年に20ミリシーベルトまで良いと文部大臣が言い、それを支持したいわゆる「専門家」や「その道の権威」が多く出現しました。
しかし、20ミリシーベルトというと、1年に400回の胸のレントゲンに当たりますから、毎日、毎日、胸のレントゲンをとる放射線量より少し多い被曝になります。
福島原発事故が起こる前まで、医師や専門家はなんと言っていたでしょうか? 「むやみにレントゲンを撮ってはいけない。腹部に当たらないように」
それなのに事故が起こると、子どもに全身被曝をしても問題ないと変身するのです。それで「信頼せよ」と言っても、普通の人間ならそういう専門家が化け物に見えるでしょう.
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この際、日本の専門家は、自分の研究ではなく、一般の人に「世界の普通の考え方」を伝えるべきです.
それは、今、多くの人が被曝し、それを避けようと工夫している最中だからです.
世界の標準的な考えは、
「放射線を浴びるとガンなどの発生の可能性が高くなり、それは「損」だから、それに相当する「得」がなければダメ」
という基本的な概念です.
今は、「原発からの電気を買う権利」=「1年1ミリの損失」という等式が成立しています。これは世界全体のコンセンサスでもあります。
このようなことを正しく伝えるのが「専門家」であって、「健康に影響がない」を繰り返すのは悪徳宗教家(?)のようなものです。
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胸のレントゲンがゆるされるのは「胸の病気を見つけるという「得」に対して、1回のレントゲンを受けてガンになる可能性(1億人に250人)という「損」がバランスしているという考え方です.
つまり、医療で受ける「被曝」は、医療で自分の体を治す「得」とバランスしていなければならないということです。
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それに対して、上に書いたように、「1年1ミリシーベルト」という一般人の被曝は「原発の電気をもらう(得)とのバランス」で決まっていて、損失の方は、1億人に5000人の発がんとされています.
つまり、野蛮国は別にして、近代国家では個人が「犠牲になる、我慢する」ということはなく、それなりの見返りが必要ということになります。
その点で、仮に1年1ミリシーベルトを、1年20ミリシーベルトに上げるためには、20倍のメリットが求められます。
このような基本的な考えを、福島の人に伝えることこそ、専門家の役割ですし、20ミリに上げるように政府に求めたのは福島県と言われていますが、20ミリに上げた場合の国家の補償や電気代の割引など、損失分のカバーをする「得」を国家に要求するべきでしょう.
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専門家は知識と経験を持っています.だから、自分の得になろうとして一般の人を騙すのはたやすいことですが、それは専門家としてやってはいけないことです.
今回のことで、福島原発事故が起こる前には、「放射線は危ない、被曝は減らさなければならない」と言って、職業的な被曝でも年間20ミリまでの枠を使わずに、被曝量を下げるように言ってきた専門家が再び、理性とホコリを取り戻すことを期待したいと思います。
ロンドン天文台長は「自らの職業に忠実な専門家は19世紀に絶滅した」と言い、社会学者のマックス・ウェーバーは、「学問は職業となった」と同じことを1920年代に言っています.
【専門家の方にお願いします!】
専門家の方はまず世界の平均的な考え方をご紹介してください。
また、日本はヨーロッパとはちがう文化を持っているのですから、お金より価値のある職業の誇りをもった発言を望みます.
(平成23年7月11日 午前1時 執筆)