第一回の中間まとめで「福島原発が爆発することが「現場で予想できた」時点で、発電所長か運転主任などが、直接、社会に通報する」ということを書きました。
おそらく多くの人は「そんなこと、できるの?」という感じだったと思います。
東電は会社ですから、「上司の許可を得る」ということが絶対で、特に会社に大きな影響を与えたり、評判を守ることに関係することは、上司の許可は欠かせないと考えられるからです.
しかし、私がこのブログで書いたこと・・・私の若い頃の経験・・・から言えば、火災事故が起こる化学工業では、自分の身の回りで小火(ボヤ、小さい火事)が起きたら、
1) ボヤを自分で消せると考えるな、
2) まず、市営消防に電話しろ、
3) 次に、工場防災隊(消防車が2台)に通報しろ、
4) 3番に、上司に連絡しろ、
ということだ。
その理由として、私に説明した人は、
「この工場は、「社会から認められて危険な化学物質を製造している.だから、危険が生じたらまず社会に知らせる」
と説明した。
若い頃の私はこの指導を受けて、ビックリしたし、また社会と企業との関係はこういうものかという点で、私の生涯の考えにも影響を与えました。
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日本で石油化学工業、つまり大規模なコンビナートが産声を上げたのは戦後間もない1950年代でしたが、最初は火災事故や爆発事故がつづき、社会の反撃を受けました。
そのため、たとえば次にできたコンビナートと社会の間には、「ベルト地帯」ができ、たとえ火災が起こっても、住民を脅かすことにならないようにとの「ハード面」での方策がとられました。
そして「ソフト面」では、「火災が起こりそうだったら、市民消防に連絡する」という教育です.
日本社会は消防が「防災」を担当しています.それが火災であっても、病気(救急)であっても、台風災害であっても、消防です.
犯罪なら110、災害なら119というわけです。
もちろんこのことは原子力でも同じです.化学火災に対して特殊な消防方法を使える消防は、原子力についても「強い放射線のもとで、原発事故を抑える技術と体制」を持っているはずです.
今、福島原発では当然のように東電社員が事故処理を行っていますが、化学工場の火災事故では、すべては市営消防の指揮下に入るのです.
なぜ、火災の時に「私有財産」である「化学工場」が、「公的な消防の指揮下に入る」という理由は、「社会に影響を与えるようになった施設は所有権が及ばない」ということを意味しています.
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私は福島原発事故が起こった後、何回か「福島原発をなぜ国家の指揮下に入れないのか?」という疑問を述べてきました。
すでに原発事故の影響は福島県を中心とした日本の広い領域に及んでいて、そこでの住民の被曝や生活に大きな影響を与えています.そのような場合に、公的な機関が「東電」を尊重しているということに強い違和感をおぼえるからです.
また、最初に述べたこと・・・東電の発電所の従業員が直接、消防に爆発を通報する・・・というのも十分可能と思います.
すぐ「そんなことをしたらパニックが起こる」と心配する人がおられると思いますが、
「パニックが起こる」
というのは、
「事故を想定せず、準備せず、訓練していない」
からであり、もっとハッキリ言えば、
「原発事故が怖いから、想定もしない」
という「逃げの姿勢」だからです。災害に向かい合う強い意志が求められます。
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まだ、日本の原発は運転されています。
もし、このまま運転するなら、「想定、準備、訓練」をすること、「原発従業員が、事故が起こりそうな時に、直接、消防に連絡すること」をまずすることでしょう。
日本で原発を運転すること、それは「原発事故」を正面から見ることができる日本人の胆力にかかっています。
そして、日本社会をすこし改善するために、
「私たちは、企業人の前に日本人だ」
という思想はすべての分野で適応することでしょう。
(平成23年6月2日 午前7時 執筆)