何事にも長所と欠点があって、長所だけみるとなかなか素晴らしいと感激し、欠点だけ取り上げると酷いことになることがあります。
その点でやや日本人は欠点を強調し、アメリカ人は長所に注目する傾向があります。
わたくしの経験では学術論文を提出しますと、日本の査読委員(論文として認めるかどうかの試験官のような人)は誤字脱字とか形式がしっかりしていないなどの小さな欠点を指摘してきますが、アメリカの査読委員は新しい発見や論理を評価することが多いという感じがいたします。
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アメリカには共和党という政党がありますが、この政党は「自由主義」に対して強い信念を持っています。
自由主義というのは、その国にいる大人の人が自分の判断でできるだけ自由に行動し、人々の自由な知恵と努力で社会を発展させて行こうという考えです。
当たり前のような話ですが、そうしますと力が強かったり運がよかったりしたした人たちが成功し、運が悪かった人が失敗するので貧富の差がでます。
そこで、成功した人が社会的に寄付をしたりすることによってお金を還元するという習慣などが自由主義という制度を補完することになります。
例えばアメリカでは「国民健康保険」というものがないのですが、これは日本のような「世話をする社会」をもとに考えますととても奇妙に思います。
しかし、「自分の健康を守るのは自分の責任」だから健康保険を入るのも、自分で判断すればよい、国家が強制的に健康保険に入らせる必要はないと考えるのも一つの考えです.
つまり、国民は自分に責任を持つことができる大人なのか、大人の格好をしている子供なのかということでもあります。
一方、現在の日本のように自分の子供を育てるにも、人が納めた税金をもらっても恥ずかしくないという「子育て資金」がある社会もあります。
どちらが正しいかはにわかには判断できません。20世紀の経験によると極端な自由主義もダメで、あまり社会主義的になるのも良くないということでした。
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日本の現在の閉塞感は後者、つまり「日本人の大人は子供だ」という考えや、「人の金をもらって何が悪い(福祉万能主義)」があまりに行きすぎて、一人一人が頭を絞ったり、責任をもったり、努力したりすることを評価をしないことによると考えています。
大学生のなかにも勉強する学生と勉強しない学生がいますが、私の考えででは、あくまでも18歳を越えた大人としての本人の問題で私達教員が学生を叱咤激励する必要はないと考えています。
大学教師の教えるべきことは、学問の他に勉強することが大切であることを説明すればよく、それに応じるかは学生に任せるべきでしょう。
「学生に厳しくない武田は大学教授の資格はない」と批判されることが多いのですが、学生は子供ではないというのが私の考えです.
そして、自分で判断する学生は、社会に出ても自分で何事も考えたり、頭を絞りますので、新しい事業を開発したり、何かにチャレンジするという力を持つと思います.
これから結婚して子供を育てようと思っている大人が、人のお金「子育て資金」を当てにするなど私には考えられません.
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先日、パチンコのことについて書きました。これについては多くの反論がありましたし、私の考えはかなり深いところにありますので、それは機会を見てもう一度書きたいと思いますが、ここで簡単にアメリカの共和党のような考え方とパチンコについて示しておきたいと思います。
パチンコには欠点があります。
もともとギャンブルですし、それにのめり込む人、不幸になる人もいます。韓国はパチンコを追放しましたが、カジノは公に認められて一流ホテルで行われています.
一方では、適当にパチンコを楽しみ、人生に潤いができ、楽しんで生活ができるという人たちもいます。
パチンコの長所と欠点のどちらを大きくみるかが問題で、パチンコを一つの娯楽にできるかどうかは、日本人が自分で自分を制御できるかにかかっていると思います。
ギャンブルがあればのめり込むのは当然だから、パチンコは追放するべきであるというような考えは「日本人は子供だ」ということが前提で、その場合は社会は狭くなり、窮屈になり、さらには発展の力を失ってしまうのではないかと思うのです.
もちろん、パチンコや子育て資金、それに大学生を叱咤激励すべきかという問題は、日本社会のある断面ですが、「一億総お受験ママ化」とも思える過保護の社会は良いとは限らないように思います.
(平成23年2月18日 執筆)