今から20年前に日本ではバブルが崩壊しました。この頃、すでに日本の産業は工業化され、第1次産業、つまり農業や水産はかなり衰退していました。
それでも,その時の農業に従事する人口は600万人程でしたから、その時期から見ると現在は約300万人以下と半分に減りました。
日本の農業では、こんなことで驚いてはいけないと先回の「特別な国:日本」で書きました。人口が減るばかりか、農業に従事している人の平均年齢が66才と「全員が定年」という奇妙な状態なのです。
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今回はさらに奇妙な実態を紹介したいと思います。
農業に従事している人は66才ですが,農業関係者で農業をサポートしている人たち例えば,農林水産省や地方自治体のお役人さん、農業委員会の人、農業試験場や土地改良の仕事をされている人,農協の職員さん、大学研究者、農業の研究をされている研究者等、農業をサポートしている人の数は農業の従事者と同じぐらいの数とされています.
そして、驚くことに、サポートする人たちの平均年齢の方は実に45才程度なのです!?!?(データが公開されていないので、40才代であることは確かですが、なかなか正確には分かりません)。
1人の農民が1人の関係者を雇い、働いている農民の方が年齢が66才で年金をもらう年齢であり,その老人のサポートしている人たちが年齢だ45才ということは一体どういうことなのでしょうか。
45才の人が働いて66才の人を養うというのならまだ話を判りますが, 66才の人が働いてそのあがりを45才の人が受け取っているということになります。
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もう一つ奇妙なことがあります。ある大きな農業団体の平均年齢はやはり45才ですが、その平均年収がどうも約500万円ぐらいのようです。
これに対して,農家の平均年齢が66才、平均年収は兼業あり、農業機械の借金ありで家にいくら入れられるかはまたまたデータ不足なのですが、約350万と言われています。
つまり,農業では,66才の人が45才の人を雇っているという逆転現象ばかりでなく,農業を営んでいる人の年収よりも、その仕事を当てにして生活している人達の年収が150万円も多いということなのです。
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名古屋市長に再選された河村さんは3年程前に次のようなことを言っておられます。
「税金を納める人が苦しんで、税金を受け取る人が楽なような社会は間違っている」
これと同じように日本の農業では農業やっているお年寄りの収入が少なく、それに頼っている人の収入が150万円も高いのです。
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複数の農業関係者になぜこのようなことが起こったのかということを聞いていますと、具体的にはいろいろなことがあるのですが,総じて言えば「議論は足りない」、「万機公論に決していない」ということに尽きるようです。
また「マスコミが農業の現状を正確に伝えない」、「利権の壁に阻まれる」、「政治家が票を気にしている」なども大きいようです.
議論をするよりもお金が欲しい、議論をするよりも利権が欲しい、議論をすると実態がわかってしまう、日本の将来より農業だ、というのでなかなか議論が進まないと言っています.
また、兼業農家の問題も「触れてはいけないこと」として闇の中に包まれています.
日本の農業に従事する人の平均寿命が66才というだけでびっくりしますが、若い人が老人におぶさり、収入もおおいと聞くと「農業が大切」というのは一体なにか!とがっかりします。
何事も合理的に進む日本でこのような事が行われる原因は、政策、票取り、利権、情報の混乱など多くありますが、農業が昔ながらの個人営業であるということも原因しているでしょう。
直接的には比較できませんが,江戸時代の鍛冶屋は現在では新日鉄とか JFEという大きな会社になっているわけですが,農業だけは相変わらず江戸時代のように個人が畑を耕して作物をとるというような環境にあります。
すでに商業の分野でも小さな商店は少なくなってきて大手のスーパーやデパートがいろいろなサービスを行っています。
もちろん商業においても、お客さんと対面しながら地元が必要としているものをきめ細かく売るのも必要ですが、同時に安いものを大量に供給することも役割です。
これと同じように農業でもこだわりおいしいものを作ることも歓迎されますが、同時に同じような品質のお米やパンを大量に供給することも必要です。
そして他の国と競争しながらやっていくわけですから,日本の自然にあった合理的な方法を選んでがなければならないと考えられます
(平成23年2月14日 執筆)
(注)この記事を書くのに少し迷いました。調べれば調べるほど環境問題と同じで、データが怪しいのです.66歳、45歳、520万円、350万円などどれをとっても正確な数字が分からないという異常な事態になっています.
それも含めて、農業は大切なので、今後も考えていきたいと思っています.