農業が大切? それで年齢は66???

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日本の農業に従事する人の平均寿命が2010年に66才になりました。

この数字は驚くべきものです。現在の日本の社会の通常の常識では20歳ぐらいまでは勉強して65才以上は高齢者ということで引退をしている人です。

もちろん中には若くから働く人もいるますし,また70歳を越えても元気で現役という方もおられますが,社会のある程度の基準というものは存在します。

もう一つ、農業というのは第1次産業といわれるくらいで「産業としてはっきりとした形のあるもの」です。従って農業という産業に従事している人は日本で20歳から65才の間の人のはずです。

高齢者の方は農業に情熱を注ぐのは一向に差し支えありませんが,トヨタ自動車やパナソニックの従業員の平均年齢が66才であるとすると,それは異常です.もしそれが正常なら今の定年制度や年金制度が間違っている事になります。

65才以上の平均年齢の人が集まって会社を運営して生産をするということが日本の常識とは大きくかけ離れているということです。

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このように考えると,農業に従事している人の平均年齢が66才であるということは本当に驚くべきことです。つまり日本には「農業という産業が存在しない」と言ってもいいですし,「農業という産業は引退した人たちだけでやっている趣味の仕事」と言わなければなりません.

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なぜこのようなことになったか?

「農業は日本の基幹産業である」とか「農業こそ大切ある」という事を何度も繰り返し言われているにもかかわらず,その基幹産業である農業が実は引退している人だけでやっていたというのは,これは余りにも奇妙でしょう。

もし、日本人が誠意ある国民で、心の底から「農業は日本の基幹産業である、農業が最も大切」と考えていたら、農業に従事する人の平均年齢はやはり40歳から50歳になるからです。

言っていることと現実が違うじゃないか!と私は思います.

農業国であるアメリカは当然ですが,ヨーロッパ等でもイギリスでは35歳未満の人がもっとも多く、フランスは40代で、平均年齢は40才から55才ぐらいの間に入り,60才以上という年齢が出てくるわけではありません。

日本でも耕地面積がある程度広く、自給率が200%もある北海道では平均年齢が56才と、低くなっています。

農業の問題というと、すぐ、食料自給率とか穀物自給率、米に偏重した日本の農業、もしくは減反政策、最近では農家の戸別補償と言った問題が議論されます。また農協を中心とした農業の流通系等についての批判も聞きます。

しかしわたくしは農業に従事する人の平均年齢が66才ということ前にすると、なにも言えないと思います。こんな事になった原因は複数ですし、農業の方の聞くと、農協が悪い、自民党が悪かったなどと言う話が出てきます。

また農業の専門家の方は、私のように科学や環境という面から産業全体を考えている人について、「お前は農業の専門じゃない」と言われます。確かに農業は複雑ですが,もし日本に本当の意味の農業の専門家がおられたら、決して平均年齢が67才にはならなかったと思います。

従ってわたしは農業について農協が悪いとか政策が悪かったというのをやめて、67才の平均年齢になったということは日本の農業は無いも同然ですから、これまでとまったく違う視点から国民全体で議論を重ねて行く必要があると考えます.

わたくしたちの次世代の子供たちの食料を確保するという意味で真剣にならないと大人の責任を果たしていることにならないと思います.

(平成232月9日 執筆)