大学の学長という職は簡単になれるものではない。学問的業績、常識的な判断、指導力、そして何より学問に対する情熱と信頼感を持つことが、学長の職を得、そして続けられる。
桜井国朋先生、京都大学の理学部を出られて、NASA上級研究員、メリーランド大学教授など国際的に活躍した後、神奈川大学学長を務められた方だ。
簡単にいうと大先生である。
その桜井先生が恒星社厚生閣から「移り気な太陽」という書籍を2010年11月15日に出版された。その106ページに、次のようなグラフが出ている.
(グラフの使用についてまだ先生のご了解を得ていませんので、縦軸を消してあります.少し見づらいのですが、ご勘弁ください。)
グラフの横軸は西暦で1600年から2000年まで、縦軸は太陽放射エネルギーと地表温度変化である。線が3つあるが、おおよそ太陽活動と地表気温の変化は一致している.
つまり、17世紀(1600年代)は太陽活動が弱かったので、放射エネルギーも低いし、地表の気温も低かった。それからずっと太陽活動が盛んになってきているので、地表の気温も上がっている.
地球は太陽の影響がもっとも大きく受ける。
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桜井先生がお書きになったのだから当然ではあるが、しっかりしたデータ、紛れのない論理で地球の気温の変化を解説していただいている.特に、地表気温を内因性(CO2など)と外因性(太陽など)に分け順序立てて論じておられる.
また、特筆すべきは、「エピローグ」に
「科学研究の結果を政治問題とするなかれ」
として執筆しておられる.海外でご活躍され、学長を経験された立派な先生がこのようなことを巻末に書かれたことに深い感銘を受けるものである.
私も浅学ではあるが「先生は“何のために”、リサイクルや温暖化に疑問を呈しておられるのですか?」と聞かれて困ることがある。「何のため」と言われれば「事実を知りたいから」と答える以外に科学はその意味を持たない.
先生は書いておられる。
「ただ私にとって理解できないことは、2009年11月半ばに起こった“クライメートゲート事件”について、わが国のマス・メディアが沈黙してしまっていることである.わが国にも、IPCCに参加している研究者がかなりの数いるだろうに、彼らからの発言も全然聞かれないのが不思議である。」
と書かれている.
かつて東大医学部の和田教授がダイオキシン騒動について、
「科学が社会に負けた」(ダイオキシンの毒性は科学の問題なのに、社会が猛毒にしてしまい、一部の科学者がそれに追従したこと)
と書かれているのを見て、いたく感激したが、それ以来である。
地球温暖化をどのようにとらえるかは別にして、本著のような素晴らしい書籍に目を通すだけで意義あることである。
(平成22年11月29日 執筆)