尖閣ビデオのシリーズも5回となりました。
まず第一に、本来NHKが「公共放送、報道機関」として受信料を払う立場にあったら、海保(海上保安庁)の中で誰でも見ることができる状態にあったビデオを入手し、放送しなければならないということを説明しました。
次に「市長の殺人」という例を挙げて「上司の命令、組織の損害」という理由で無制限に「守秘義務」を論じるのはとても危険なことを書きました。
そして3回目には私の経験で、「工場が火災になったら、どこに電話をするか」について整理をしてみました。この話は「私たちは組織人の前に国民だ」ということを示したかったのです.
そして、この問題は複雑なので、もう少し前提になることを示しておきたいのですが、ここで第一段階のまとめをしておきたいと思います.
・・・・・・・・・
国家には外国に対する機密がありますし、時によっては国民にも秘密にしなければならないことが起こります。民主主義では、国民が政府を選ぶのですから、その政府が国民に秘密にすることがあるというのも奇妙ですが、実際には秘密があります。
そこで、普通は次のような手段をとって、この問題を解決します.
1) ある判断で「秘密情報」を特定する、
2) 「秘密情報」を厳密に管理する、
3) ある時間が経ったら「秘密情報」を開示する、
4) 秘密情報の中に「犯罪性のもの」は含まない、
というものです。
全ての情報を「秘密」にするのは不適切です.むしろ「原則は公開だが、秘密にする必要のあるものだけを秘密にする」方が良いでしょう.
いったん、秘密に分類されたら、それを厳重に管理する必要があります。また秘密にしようとするときに公開されてしまえば、秘密ではなくなります。
ある人が「秘密にする」と決めたことが妥当だったかどうかは、ある時間を経ったら公開して国民が判断するようにします。
明らかに犯罪であるもの、たとえば「市長の殺人」とか、この尖閣諸島の事件では、「第五海保が11月8日には「複数の人が自由に尖閣ビデオを見ることができた」という事実に対して11月10日に「ビデオは極秘として厳重に管理していた」というようなウソ」は犯罪性が高いので、秘密にしておくことはできません。
それは公務員であっても、市長や第五海保が行ったことは、社会的に許されないことをした、つまり「犯罪」に当たるからです.
最近、あるチェーン店がノロウィルス事件を5回も起こしたのに、秘密にしていた(隠していた)という事件がありましたが、こんな秘密を許していたら、食品の安全を保つことができません。
・・・・・・・・・
以上のことを考えると、今回の尖閣ビデオは「国家の機密」、あるいは「海保の秘密」だったのでしょうか?
1) 海保は日常的にビデオで撮影している、
2) 海の上の活動なので、ビデオで撮影したものは公開される事が多かった、
3) 今回のビデオはある期間、海保内では「秘密扱い」ではなかった、
4) 海保内のあらゆる書類を「他人に見せない」ということは不適切である(私も名古屋市から「普通の書類」は「普通に見せていただいている」というのが実情です。「マル秘」の書類は許可を得なければ見ることができません。もし市庁内の全ての書類がマル秘になると、市民としては困ります.)
5) 従って、尖閣ビデオは「国家の機密」でも、「海保内の秘密」でもなかった、
6) 官房長官は「容疑者の逮捕は政治判断ではない」としており、本事件(中国人の逮捕)が「国家」とは関係がないことを示しているので、「国家の機密」にはあたらない、
7) 首相は「尖閣ビデオを見ていない」と言っているので、本事件(ビデオの公開)が重要な国家の機密ではないことを示している、
8) 善良な公務員が、マル秘になっていない情報を、善意で国民に示すのは犯罪でもなく、執務規則違反でもない。
と考えられます.
でも、この事件は奥が深く、しかもこの際、「日本の機密」を考えなければならないので、「一応の結論」ということにしておきます.
「中締め」のようなものです。
(平成22年11月17日 執筆)