軍事政権下のビルマ(ミヤンマー)で総選挙が行われ、外国人の取材が閉め出された。
そのビルマに国境から入ろうとした日本人のジャーナリストが不法入国で拘束されたが、彼は、
「報道というものは、禁止されれば何とかして取材しようとするものだ」
と明確に答えた。
その通りである。日本のマスコミも記者を支持しているように見える.
近代の歴史は「報道の自由がなければ民主主義は成立しない」ということを繰り返し教えてきた。そして日本でも戦後、憲法に「表現の自由」を明記し、報道機関は取材、記事の執筆、新聞やテレビの報道の自由を獲得し、さまざまな特権を持っている.
報道の自由とはビルマに侵入しようとした記者が言っているように「隠そうとしていることを暴く」という事だ。
NHKはそれに加えて「報道の自由を守るから、その見返りとして受信料を強制的に取る」ということをしている.それ以外に強制的にお金を取る権利はない。
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国家的なもの(たとえば今回の尖閣ビデオ)のようなものに対して、「何を秘密にするか?」は「神様」が決めるのではなく、「時の権力者」が決める。
ところが権力者は得てして「民が主」ということを忘れ、「自分の権力を守るために」という目的で秘密にしようとする.
今回のビデオを秘密にしたのは、今の政府であり、決して神様ではない。つまり「最初から秘密にすると決まっているもの」でも何でもないのだ。私たちが選挙で選んだ人、つまり国民より一段と低い立場の人たちが決めたことだ。
それなのに、報道を聴いていると、「秘密と決めたものを報道してはいけない」という「識者」が多い.もう少し歴史と民主主義、そして日本国憲法を勉強してもらいたいと思う。
「ビデオを秘密にすべきかどうか」は最終的には国民が決める.そして今回のビデオを見る限り、私にはどうしてこのビデオを非公開にしたのか理解できない.
日本の領海内で起こった悪質な衝突事件で、ビデオそのものは個人の名誉や残虐な画像はなく、ある日本人が日本の領海にいて目撃した映像を流したのとまったく変わらない。
また、流れている映像は「事実そのもの」と見えるので、中国がなにか文句を言う筋合いはない。中国自身も見たかっただろう.事実を知ることが国家間でももっとも大切だからである.
つまり、ビデオを公開するべきかはビデオの内容によって国民が決めるものだから、国民の反応を見ると、今回のビデオは公開が適当であり、政府が「国民の知る権利を侵した」という罪が残った。
それにしても、ビルマの記者の態度を評価し、片方で尖閣ビデオを放映しないことに恥じないマスメディアはどういうものだろうか?
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それでは、日本国民が知りたかったし、日本の国益にも反しないビデオを、なぜNHKは放映しなかったのだろうか?
NHKがなにかというと言っているように「NHKは受信料を払っている視聴者のために存在する」。だから、真っ先に報道すべきだし、もし入手していないなら、取材陣はなにをしているのだろうか?
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日本には民主主義がまだ存在しない。それはNHKが存在するからだと私が言っている理由の一つがここにある。「権力を守る」という報道機関は憲法の精神に違反していて、特権を渡すわけにはいかない。
今日、2010年11月8日、朝のNHKのニュースでは「ビデオを流した犯人を捕らえる」という事ばかりを言っていた。完全に権力側だ.
NHKがまず説明しなければならないのは、なぜこのビデオがNHKから流れなかったのか、ビデオの内容からいって国民の知る権利を侵すほどのことでは無かったということを解説すべきだろう.
(平成22年11月8日 執筆)