海に10匹の魚が群れをなしている.
その中で際だって体の大きな魚が一匹、それがオスで群れを守っている.後の9匹はメス。子供を産み、育てるのが任務だ。
そんな群れに敵が襲ってくる.襲ってくるのだから、最初から群れの魚と争っても勝ち目のある大きな魚だ。メスは一斉に逃げる。
メスが岩陰に身を潜めるまでの時間を稼ぐためにオスは必死に戦い、やがて命を落とす。
人間の社会でこんな話をすると「男と女は平等だ.役割分担を決めるな!」などと怒られるが、もちろん平等に決まっている.でも役割分担はある。
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やがて、敵が去ると岩陰に潜んでいたメスたちが出てきて9匹の群れを作る.そしてしばらくすると、メスの内の一番、体の大きなメスが性転換してオスになる。
やがて、子供も生まれて群れはいつのまにか14匹になっていたりする。
「不思議だなあ・・・」とある人が言った。もちろん、私自身も感心したり、不思議に思ったりするのだが、実は「知らなかった」ということだけだし、「普通の出来事」でもある。
「性」というのはそれほどハッキリと区別されたものではない。ある時にはオスで、ある時はメスになる.少し下等な動物では、安全な時にはオスでもメスでもなく、危険が迫るとオスメスに分かれて有性生殖するものもいる。
すべて「種を残す」、「命を守る」ということでハッキリしているだけだ。
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「お肌の曲がり角」というのがある。女性では30歳前後である。
なぜ、30歳前後にお肌が曲がり角に来るかというと、「生殖年齢を超えて、男性を獲得する必要がなくなった」からである.
生物はムダなことはしない。すでに生殖年齢を超えた女性の肌をきれいにする必要が無いので、「やるなら自分でやって!」と肌のケアーは放棄するのだ。
また、35才以上で出産するとやや危険である.
出産自体も危険になるけれど、生まれてくる子供が目に障害が見られたり、ダウン症候群になる可能性が高くなる.
これも、「出産年齢を超えたのだから、体はあまり面倒を見ませんよ」ということだし、さらに深く説明すると「母親が、子供が成長するまで生きていけない年齢になると、人類としては出産は歓迎しないの」ということでもある。
厳しいと言えば厳しいけれど、それが「自然体」というものだ。
人間はいろいろ希望や夢、そして経緯(いきさつ)がある。だから、無理もするし、努力もしたくなる。でも、自然はいつも自然体だから、ダメなものはダメ、良いものは良いとハッキリしている.
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自然界にいる動物が「健康のために運動をする」などということを見たことがない.ダイエットをしたり、健康のための運動をしたり、オリンピックを開催して少しでも早く走れるようにするなどということは人間だけがすることだ。
これも人間が無理をしている。必要だから運動し、お腹が減ったからご飯を食べ、走れるスピードで走る、それが動物だ.
自然はあくまで自然体で、その原理原則にそって行われていることを「不思議だ」とか「自然の叡智」などとあまり言わない方がよいのではないか。
自然の減少はある意味で不思議かも知れないが、テレビ番組のように「自然」と言えば「不思議」がついている方がおかしい。むしろ人間の方があらぬ事を考えるから、自然が不思議に見えることが多い.
(平成22年9月4日 執筆)