厚生労働省,日本生活習慣病予防協会,またメタボリックシンドローム撲滅委員会などが、メタボ,つまり肥満と健康について多くの「指導」を行っている。
その指導は一貫して「肥満になると病気になりやすい」ということであり、たとえば、日本肥満学会は肥満の人は普通の人に比べて心血管疾患は1.4倍に増える」としている。
他の文献を見ても、おおよそ数字はこのぐらいなものと思う。
しかし、当然のことながら、病気は心血管疾患だけではない。カゼを引いて肺炎になる,お腹の具合が悪いと思っていたら腸閉塞だった、外国に旅行にいったらこともあろうにマラリアにかかった・・・など病院の科の数を思い浮かべればわかるように病気の数は多い。
肥満の問題を考えるときの最大の問題がここにある。
確かに肥満の人は普通の人に比べて心血管疾患が1.4倍になるのかも知れない。でもその「肥満の人」というのは、「正常な生活を送っていて小太りな健康体」なのか、「毎日、ケーキばかり食べてまったく運動もせずかなり太っている人なのか」、あるいは「なにか病気があって、それが原因して肥満」か、それによって大きく違う。
人間の体だから個人差もある。すこし太り気味の方が調子の良い人と,かなり食べても太らない人もいる。イッパヒトカラゲにするのは、私たちを「人間」と思っていないのではないかと訝る。
そこで、肥満と心血管障害以外の病気の関係を少し調べてみた。
たとえば厚生労働省の調査研究で9万人を対象として、肥満度とガンの関係を調べたものがある。
この調査は肥満度で言えば23から25(普通の体型)の人がガンにかかる比率を1.0として、太っている人と痩せた人がどのぐらいガンになりやすいかを調べている。
表からすぐ判るが、小太りの人は普通の人よりガンになりにくく、かなり太っている人(肥満度で27から30もある人)ですら、普通の人とほとんど変わらない。
さらに、お相撲さんのように100キロを超えるような人になると、2割ほどガンになりやすい。
それに対して、痩せている人は危ない。標準よりすこし痩せている肥満度21から23の人でも1割はガンになりやすく,ガリガリに痩せている肥満度14から19の人の発がん率は標準の人に比べて実に3割もガンになりやすいのである。
ガンになるかどうかは運命的なものもあり、長寿になるとどうしても自殺因子としてのガンが増えてくるということもあるが、なんと言っても普通の生活ではやはり「免疫力が強く元気であること」がガンを防ぐ第一だ。その点では「小太り」の人がガンになりにくいというのは頷ける。
このデータは国立がん研究センター予防研究部が公表しているデータだから,確実である。
「メタボ」という制度は、健康診断を受ける本人にペナルティーをかけるのではなく自治体や健康保険組合に圧力をかけるという点で「村八分的制度」であるし、さらに厚生労働省が経費の締めつけをするのに、メタボの人に対する助成を削るのではなく,75歳以上の後期高齢者の補助を減らすという「見せしめ罰」をするなど、不健全なところがある。
さらに、特定の学者の儲けのためとか、製薬会社の陰謀かという噂が絶えない。
恐れ多くも国民の健康と命に関することだから、不透明さを無くして,明るく健康であるような制度にして貰いたいものである。
(平成22年6月1日 執筆)