ベトナム戦争、すでに歴史の陰に隠れようとしているが、超大国アメリカと小国ベトナムが戦った現代戦だが、アメリカが本格的にベトナムと戦争を開始したきっかけは「トンキン湾事件」だった。
事件は1964年8月に北ベトナムの哨戒艇がアメリカの駆逐艦に2発の魚雷を発射したと報道された事件だった。
アメリカ大統領は北ベトナムの爆撃を提案,議会は圧倒的多数,下院に至っては全会一致で北爆を支持した。
ところがそれから7年、1971年になってニューヨークタイムズのニール・シーハン記者がペンタゴン(アメリカ軍の司令部)の秘密文書を入手,この事件がアメリカの「ヤラセ」だったことを暴いた。
戦争はかくのごとくにして始まる。
戦闘を仕掛けたいという国がでっち上げか、挑発をして事件を起こし,それで世論を喚起して戦争に突入する。
その時に、主要な役割を果たすのはマスコミだが、常にマスコミはオッチョコチョイで「戦争を起こそう」という側の陰謀に荷担する。
それが歴史的事実である。
さらに2003年のイラク戦争では、アメリカのブッシュ大統領が「イラクは大量破壊兵器を持っている」という理由と、「フセイン大統領はケシカラン!」という2つの理由から国連の安保理決議が得られないままに,イギリス・オーストラリア,そしてポーランド工兵部隊などと編成を組み、イラクに攻め入った。
しかし、イラクには最初から大量破壊兵器などはなく、フセイン大統領が明確に答えなかったのは、政権安定のためだった。
責任ある国の大統領なら、その国民が不利になるようなことをあえて発言するはずもない。まして大量破壊兵器のようにその国の軍事秘密をバラす大統領が良い大統領とは言えない。
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ところで、2010年5月、北朝鮮が韓国の艦艇を攻撃したとして世論が沸騰している。日本はちょうど普天間基地問題、口蹄疫問題が大きく,それほど関心を呼んでいないが、朝鮮半島は当然のことながら、世界の株価に影響を及ぼすほどである。
新聞やマスコミ論調はいずれも「北朝鮮が悪い」とか、あるいは「この際,北朝鮮を攻撃しろ」などと言うものもある。
このような時に冷静に報道し、論評するマスコミが欲しい。つまり、「平和が大切だ」というなら、このような「挑発」に乗らないのがもっとも大切なのだ。
戦争をしたいときには、アメリカのトンキン湾事件や大量破壊兵器のように「ウソ」を構えるか、これまでの歴史で多くみられるように「小さな小競り合いを実際にやってみる」という2つの手段がある。
仮に北朝鮮が韓国と一戦を構えたいとして韓国の艦艇を攻撃したとすると,それに乗るのは「平和を愛する行為」ではない。「あなたはそんなに卑怯なのですか」と繰り返すのが良い。
アメリカはマスコミが発達していると言っても,トンキン湾事件の時には下院が全会一致で戦争を支持した。その裏にはマスコミの煽りがある。
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私は、「北朝鮮とアメリカ」を考えたときに,日本人は「アメリカがやることは汚くても正しいが、北朝鮮はダメだ」と差別していると感じる。
強い国は正しく,弱い国は間違っているなどという程度の低い感情を持つようでは、「強い者が正義」だから,戦争を肯定することになる。
その点では日本の新聞やテレビは「戦争支持」であり、平和など愛していないことがはっきり判る。
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ところで、白人がインディアンを追い詰めていったアメリカ開拓の頃、白人が使った手口を紹介しておきたい。
白人はまず恐る恐るインディアンの土地に近づき,若干のトラブルを起こしながら生活を始める。
そのうち,しばらくして、お酒と豪華なプレゼントを持ってインディアンと宴会を行い、しこたま飲んだ後,インディアンの酋長に「契約書」を見せる。
その契約書は英語で書いてあってインディアンには読めないのだが、白人は口で「あなたの土地で農業をやりたいのです。私たちも食べ物がないと死んでしまいます」と言う。
共存共栄をもってするインディアンとしては,その契約書が「土地を貸してくれ」という書類と思ってサインすると,実はそれは「白人が地主になる」というものなのだ。
しばらくして、それが露見するとインディアンは怒って白人に文句を言う。そうすると白人は「契約違反!」と言ってインディアンを皆殺しにした。
「形が正しければ騙しても良い」、「お金がおいてあれば盗んでも良い。置いておいた方が悪い」という白人の論理と,「してはいけないことはしない」という有色人種の接点だったのだ。
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日本人は世界でももっとも高い道徳を持ち,「してはいけないことはしない」という点で徹底している。この際,歴史的事実、彼我の文化を慎重に見極め、力が全てという国とは距離を置きたいと思う。
(平成22年5月26日 執筆 音声あり)