「日本人間ドック学会」というのがあり、そこで、2006年に人間ドックを受けた約300万人の人のうち、「健康」とされた人はわずか10%にしか過ぎなかった。

人間ドックでは検査項目が50項目ぐらいあるので、このぐらい多くの検査をすると「健康な人」でも、1つや2つは引っかかる。だから、日本人の90%が病気という判定を受ける。

人間ドックに入ると、(かならず)病気になる。

人間ドックまで行かなくても職場で普通の人が受ける健康診断では、体重、身長から始まって尿検査、血液検査などが行われるが、こんな簡単な検査でも、「健康」な人はちょうど半分で、残りの半分が「異常値が見られる人」、つまり病気ということになる。

さらに具体的な検査項目だけを見ると、男性の肝機能の異常、高コレステロール、そして肥満がそれぞれ4分の1もいる。

つまり、健康診断を受けると、「必ず病気になる」と言ってもそれほど過言では無いという状態だ。「健康診断が病気を作る」と言う人もいるが、必ずしも過激ではないような感じもする。

これでは、あまりに酷いということで、厚生労働省も研究をしていて、普通に行われる24項目のうち、16項目は意味がなく、8項目しか健康とは関係ないという報告もある。

その中でも、血圧、糖負荷、(飲酒、喫煙、うつ病の問診)、(身長、体重:肥満度の計算)だけが意味があるとされる。コレステロールの検査も心筋梗塞予防などとも関係性が薄いと報告されている。

多少なりとも自分の健康に気をつける人なら、飲酒,喫煙、肥満のようなものは自分で判断できるから、血圧と糖負荷ぐらいだけが意味があることがわかる。また最近では町中で血圧を測るところが多いので、健康診断では糖負荷だけが意味があるかも知れない。

・・・・・・・・・

もう少し具体的に踏み込んでみよう。

たとえば、同じ2006年の国民健康・栄養調査という厚生労働省の報告を見ると、約4500名の「普通の人」の健康診断で、約60%が「高血圧」とされている。実に10人に6人が高血圧という異常な国民なのである。

でも「異常」なのは、日本国民の方なのだろうか? それともなにか別のところに原因があるのだろうか?

日本の血圧の基準はJHS2009で決まっているが、年齢に関係なく上が140、下が90となっていて、メタボではさらにこれが下がり、上が130、下が85になった。しかし、論文を見るとたとえば80歳以上の人では上が180、下が110以上にならないとリスクにはならないとある。

つまり、現在の日本のようにお年寄りの数が増えると、上の血圧が130で異常などと言っていると、健康な人も全部、病人になる。

さらに、むしろ低血圧が危険で160以上の場合がもっとも死亡確率が低く,140以下ではリスクが高いという報告もある。お年寄りは「塩分を控えると死ぬ」ということになる。

これは当然で、「血圧は意味があるから圧力が高い」のであって、つまり「人間は自分にもっとも適切な血圧に調整する力がある」からだ。

・・・・・・・・・

日本は飛び抜けて血圧の基準が低いのだが、これはどういう理由だろうか?

まず、第一に、リサイクル,ダイオキシンなどと同じように、日本人は実に洗脳するには容易な民族で、素直でおとなしく、さらに役人に代わって人を説得する人が多い。

だから、なにしろ厚生労働省が血圧だけを問題にすれば、本来は血圧を下げすぎることが危険でも,役人が言えばNHKが報道するので、それをあたかも自分がよく調べたことのように人に強制する人が増える。

また、人の健康や命と、お金の話をするのはイヤだが、高血圧の治療薬の市場は2010年には9144億円で、近い将来には1兆円を越える産業になる。

この血圧の問題も,メタボ、タバコとともにすこし考えてみたいと思う。

(平成22519日 執筆、音声あり)

「20100519blood.mp3」をダウンロード