昨日、タバコを考えるパート7で喫煙率と肺がん死亡数の関係について解説をしました。
この問題をさらに考えるためには、グラフの読みかたについて説明を要するのではないかと思い、地球温暖化を例にとって「グラフは使い方によってはどうにでもなる」という例を示しておきたいと思います。
まず、このグラフですが、横軸に西暦をとり、「最近、CO2の濃度も上がっているし、気温も上がっている」という説明をされることがあります。
「だから、CO2が温暖化の原因だからCO2を減らさなければならない」と言われました。
さらにこの図では横軸にCO2をとり、縦軸に地上気温を取ると、CO2が増えると地上気温があがると言う綺麗な関係が認められます。つまり一つ前のグラフは横軸が1960年とか、2000年とかいうような「時間」ですが、「CO2と地上気温」の関係を整理しても、綺麗な比例関係があるということになります。
そこで多くの人が「CO2が温暖化の原因だ」と思ったようです。
数年前、私は次のようなグラフを出してある人を冷やかしたことがあります。
このグラフは横軸が西暦で地上気温の変化と私の年齢、つまり武田の年齢を取っています。私は人間なので、毎年、歳を取ります。従って、右上がりの線がかけます。
どうも、武田が歳をとると地上気温が上がるような気がするので、次のグラフを書いてみました。
驚くべきことに、横軸に武田の年齢を取ると、な、なんと「武田が歳を取ると地上気温が上がる」という結果が得られるではありませんか!
「俺はそんなに偉かったのか」と錯覚してしまいそうなグラフです。
もちろん、武田の年齢と地上気温(世界)には何の関係もありません。これを「相関関係」といい、こんなものは幾らでもあるのです。
「相関関係があるからといって、因果関係があるということではない」というのはすこし難しい言い方ですが、科学のデータを解析する時には絶対に必要です。
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話は飛びますが、私が「塩分を取ると高血圧になる」というのを疑っているのは、この結論になった基本的なデータがアメリカの医師団によって発表されていますが、そこには相関関係が示されているだけで、はっきりした因果関係は無かったのです。
また、別の報告では「血圧調整に問題がある人」の群では塩分を控えめにしたら、病的な高血圧を下げるのに効果があるようですが、「血圧の調整が正常に行っている人」の場合、ナトリウムやカリウムの代謝が正常なので、血圧の調整はできるという報告もあります。
つまり、「塩分を多く取ると高血圧になる」という相関関係と、「血圧調整に障害がある人は塩分を控えると血圧が下がる」というのが事実としても、一般的に「血圧と塩分に関係がある」とは言えないのです。
すこし難しくなりましたが、自然科学というのはこういうものだということの一端を示しました。そしてタバコについては、見かけ上、「タバコを吸う人が減ると、肺がんが増える」ということになっていますが、これも即断をしてはいけないということを言いたいのです。
(平成22年5月17日、執筆、録音あり)