「朝食は大切だ」と多くの人が言う。確かに実感としてそうなのだろうけれど、動物としての人間を考えるとどうも解せない。

「朝食は大切だ」というのはどうも「お題目」に聞こえる。朝食を食べた小学校の児童は成績が上がったと報道されたけれど、朝食を食べるというグループは、規則的な生活をしているし、家庭も子どもに注意を払っている。睡眠時間も朝食を食べない児童は短い傾向になっている。

だから、朝食を食べる小学生と、食べない小学生を比較して、朝食を食べるグループの方が成績が良かったから、「朝食を食べると成績があがる」という結論はいただけない。朝、お父さんと顔を合わせるから気が引き締まるのかもしれない。

判断を正しくするためには一つ一つのことを正確に理解しなければならないのに、マスコミやいやに拙速だと心配になる。

もし、私の学生がそんな杜撰な実験データの処理をしたら、ジックリと指導して、「学問は類推してはいけないよ。シッカリしたデータを積み上げないと」と教える。

もともと、動物はあまり朝食というのを食べない。起きたらしばらくはボヤーッとしているか、遊んでいるかだ。

体重調整が大切で食事を管理する競走馬でも、朝早く起きて調教してから朝食を与える。午後の飼い葉も同じだ。食べてから活動ではなく、活動してから食べて休む。それが動物のリズムのはずだ。

ライオンは一日中、寝ているのでハッキリしないが、やはり「運動してお腹が減ったら狩りをする」というのがリズムだ。

人間でも「朝食抜き健康法」を実践している高名なお医者さんもいれば、

ある一つのことを考えるときには結論を急がず、いろいろな面から検討して、自分が言っていることに矛盾がないか、よくよくチェックするのが私のやり方である。

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そう考えて、人間だけが「寝て、起きたときに栄養を取らなければならない」というのにはそれなりに理由が必要だろうと思って、もう20年ほど前から栄養学の本を読んだり、栄養学の人に聞いたりしたが、結局、「栄養的には朝食は不要。リズムを取るため」という結論になっていた。

確かに、ヨーロッパのコンチネンタル・ブレックファストというのは、パンとコーヒーだけで栄養というより「目覚め」のための食事という感じだ。

「朝食は頭脳労働する人間に必要だ。脳はブドウ糖(グルコース)しか熱源にならないから」と言う人がいる。

脳が一日に消費するブドウ糖は約150グラム。ブドウ糖は食事をとったあとに血中にでるので、朝食を食べないと脳が動かないという。

でも、人間の体はそれほどやわではない。肝臓は1.5キログラムもあって、血中のブドウ糖をグリコーゲンに替えてため込み、必要な時に逆反応をしてまた血中に出す。筋肉も必要に応じて分解してブドウ糖を出す。

だから「ブドウ糖を供給するために朝食がいる」というのも、すぐには納得できない。

でも、おそらくは多くの人が言うのだから、朝食が大切なのだろうが、本当に「太りすぎ」の人が多く、健康の問題があるなら、今、私たちが考えている「ダイエット」というのになにか大きな間違いがあるのではないだろうか?

(平成22426日 執筆)