最近、大手の自動車会社や電機メーカーが「補助金」の制度を利用して儲けている。
太陽電池のようにすでに40年前から国の援助を受けているのに、まだ受け続けている大きな会社もいる。
「国の政策に補助金をだすのは当然だ」というけれど、実はそれほど綺麗なものではない。テレビを買うときにエコポイントという補助金を貰うと言うことは「自分が楽しむ物にお隣さんのお金を貰う」ということだから乞食と同じだ。
生活が苦しくて人様のお金を恵んで貰うことがあっても、大きなテレビを買うのにお恵みを貰う必要は無い。
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この補助金というのを技術者の立場から見てみたいと思う。
なぜ、補助金が必要なのだろうか? 特にすでに売り出している自動車や家電製品などに補助金がつくのはなぜだろうか?
技術が素晴らしくて良い物を安くできる技術があったとしよう。かつての日本商品が世界で活躍したのは、その技術が素晴らしいので「良い製品を安く作る」ことが出来たからだ。
たとえば「世界の平均的な技術では、この性能のテレビが10万円」という時に、日本の家電メーカーは「7万円」で作った。だからたとえ9万円で売っても 2万円だけ有利だった。
これが技術者の誇りだ。そして、「安い」ということは「技術が良いので、無駄が少なく、省エネルギーで製品ができる」ということだから、技術としては鼻高々だ。
ところが技術が拙劣で12万円もかかるとすると、2万円の補助金を貰って10万円にしないと世間様と太刀打ちできない。
つまり、補助金とは「自分の技術はこんなに劣っています」ということを世間に公言することに他ならない。
そんなことは技術者にとって耐えられないことだ。
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ただ、短期間に援助を貰うなどはある。それもどんなに長くても10年ぐらいだろう。10年、補助して貰ってもまだ世間様より劣っているならあきらめた方がましだ。
太陽電池の補助金は大規模研究補助の時代もいれて40年を越える。
ある時に私は太陽電池の大メーカーの技術担当重役に「なんで補助金など貰っているのですが。こんなに長い期間にわたって貰うのは技術者としてどうですか?」とお聞きしたら、「本当は貰いたくないけれど、国が貰えというので」と言われた。
今、補助金を貰っている家電メーカーや自動車会社は、まもなく廃れるだろう。それは「補助金こそが技術の痲薬」だからだ。
(音声あります)
(平成22年4月25日 執筆)