ミャンマーという国、昔はビルマといった。普通は国の名前は政治体制が変わっても変わらないけれど、ビルマの場合、政治体制が変わって国の名前自体も変わった。
こういう場合、ややこしい。国の名前の呼び方で、その政治体制を支持しているかどうかの目安になってしまうからだ。
ミャンマーの場合は、1989年に軍事政権が国名を改称したので、ミャンマーと呼ぶのは軍事政権を支持することを意味しているとの考えもある。
・・・ここで、「考えもある」と書いたのは、日本国内のことと違って、国際的なこと、つまりグローバリゼーションが難しいのは、ものすごく広い価値観の中で動いていることを、日本人の価値観で考えるからだ・・・
これが難しい!!
ともかく、ミャンマーと呼ぶのはややアジア系の国や人、ビルマと呼ぶのはややヨーロッパ系の国や人という傾向がある。
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1000年ぐらい前から、ビルマにはパガン王朝、タウングー王朝などのビルマの人たちの王朝があり、蒙古に滅ぼされたりしたけれど、最後はコンバウン朝ビルマがイギリスに敗れて植民地になった。
当然だが、ビルマの土地はビルマの人たちのもので、遠いヨーロッパのイギリスがビルマを軍事力で支配するのは、適切ではないと私は思う。
ところが、今でもビルマの政治は「ビルマを不当に植民地にしたヨーロッパ勢」に影響を受けている。
ヨーロッパ人(アメリカ人を含む)はなかなか興味ある民族で、一言で言えば「ご都合主義、物忘れ民族」である。
自分に都合の良いことを何とか高尚な理屈を付けて相手をごまかし、かつて悪いことをしても、それをすぐ忘れる。そして「あんなことをしたじゃないか」というと、「過去のことより現在が問題」といって話をそらす。
なかなか巧みだ。おそらくはヨーロッパの気候が悪かったので、人が悪くなったのだろう。ヨーロッパ人は辛い。
とにかく、イギリスはビルマに散々なことをしてきたのに、現在の政権が悪いとか文句をつけている。日本文化で言えば、そんなことを言うなら最初によく謝って賠償金で支払ってからにしてくれ、ということになる。
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それはともかく、今回はここから話は佳境に入る。
アウンサンスーチーという名前の女性を多くの日本人が知っているだろう。そして日本のマスメディアは「アウンサンスーチーさんは正しくて、軍事政権は間違っている」ということを前提に報道している。
特に、彼女が1991年にノーベル平和賞を受賞したことで日本のマスメディアの報道姿勢は完全にアウンサンスーチーが正しいということになった。
でも、まずは彼女の経歴を見て、考えてみよう。
1964から67年にかけて、イギリスのオックスフォード大学で学び、学士号を取得した。その後、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院に務めた後、1971年までニューヨークの国際連合で書記官補になっている。
また、私生活ではチベット研究者のマイケル・アリスと結婚して2人の息子をもうけている。
その人の考えや行動は、必ず経歴に影響される訳ではないが、アウンサンスーチーの場合は、
1) 彼女はミャンマーの救世主である、
2) 彼女はイギリス利権(それをバックアップしてきた華僑とインド商人)の代弁者に過ぎない、
という考えと二つある。よくよく彼女の言動とミャンマー政府の政策を見てみなければならないが、今のところはどうもアウンサンスーチーさんは悪者のように見える。
そして、ノーベル平和賞はイギリスがノルウェーに働きかけて受賞させた疑いが強い。
いずれにしてもグローバリゼーションというのは、他国の文化、他国の利権を考え無ければならない。日本の常識、よい子の文化では解釈が難しい。
(平成22年4月6日 執筆)