日本の年金の構造はあまりに複雑です。
月刊誌”WiLL”の4月号に日下公人先生が「私はクロウトでも、シロウトでもなく、アバウトだ」と書いておられますが、物事の本質を理解するには大切な言葉でしょう。
年金で日本の国民がすっかり騙されたのは、「シロウト」が「クロウト」になろうとしたことで、その結果、クロウトにすっかり騙されたのです。
私も科学者ですから、科学のことで普通の人を騙すことは出来ます。でも、それをしないのは、自分が命をかけてやってきた科学を冒涜することができないことです。
そこで、私は科学をアバウトで説明します。
科学をアバウトで説明するのは正しいと思います。それはノーベル賞を受賞した湯川秀樹先生、江崎玲於奈先生、そして福井謙一先生がそろって、簡単な言葉で説明しなさいと言っておられることを見ても判ります。
ここでもできるだけ簡単明瞭に年金のしくみと将来像を示したいと思いますが、まず第一に「年金とは実に複雑だ」ということを示しておきます。
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図を示しました。
国民年金がまずすべての年金の基礎にあり、その上に「2階部分」と言われている厚生年金、共済年金、それに国民年金基金、さらに厚生年金基金、適格退職年金、共済年金職域相当部分が乗っています。(社会保険庁HP, 公的年金制度の体系 数値は厚生労働省年金局年金財政HPより)
この複雑なしくみを全部、理解しようとせず、次のように考えたら良いと思います。
1) 一応、国民全体に最低線を保障する
2) 支払いの余裕のある人は加算する
ということです。
国民年金の説明としては、「日本国内に住所のある20歳以上60歳未満のすべての人が強制加入し、老齢・障害・死亡の保険事故に該当したときに「基礎年金」を支給する公的年金制度」となっています。
一見、良い考え方と思いますが、これがだましの元になったものの一つでもあります(次回以後に説明します)。
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面倒なことを話したついでに、加入者の数を整理して起きました。
年金の対象者は、
自営業などが2200万人、
サラリーマンの妻が1100万人、
サラリーマンや公務員が3700万人
の合計7000万人です。
日本の人口は1億2千人程度で、教育を受けている子供が約5分の1の2600万人、仕事の終わりかけている60歳以上の人が約4分の1の3000万人なので、総人口からもともと年金を支払はない人の合計を引くと7000万人です。
7000万人の人が年金を支払い、その中で「国民年金」を受け取っている人の数は平成19年度で2500万人ということになります。
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軍人恩給などを除けば、1961年にスタートした日本の年金制度は、まだまだ制度が不明瞭で、支払っている人の数や、受けている人の数もわかりにくいのが特徴です。
でも、ここでも「アバウト」を発揮しましょう。あまりギリギリと数字をつめないで、結果的に老後が安心できるにはどうしたら良いかを考えて行きたいと思います。
このアバウトは厚生労働省などが発表する「将来の設計」はあまり参考にしないということも加わります。
本来はお役所は国民のために働くのですが、残念ながら現在は「お役所はお役人のためにある」というのが本当のところだからです。
たとえば、厚生省は年金運用利回りを3.2%で試算していますが、これは現実に運用利回りとして得られる率ではなく、物価上昇率の2.1%を上回る「希望的数値」をつかって、あたかも老後が安心なような試算をしているだけです。
また、年金が不足すると「国庫補助」がでます。これを歓迎している人がいますが、国庫補助とは税金ですから、年金の掛け金が多くなったようなものです。
騙されないように!
(平成22年4月3日 執筆)