世界の何カ国ぐらいに行っただろう。企業の技術者の頃はもっぱらビジネスでの旅だったから先進国が中心で、アメリカ、フランスが特に多かった。
大学に移ってからは、学会や大学調査などになり、中東、アジアなどにも行くようになり、バスに乗ったりしてそれまでの外国出張とは様変わりになった。
結局、アフリカは行ったことが無いし、南アメリカは一度だけだ。でもその他の国や地方はおおよそ経験しているような気がする。
・・・・・・・・・
そんな私の経験の範囲から見ると、日本のように気候が良く、水を安心して飲むことができ、買い物は安心して買えるし、衛生的で犯罪も少ないところはそうそう無かった。
世界で一番かどうかは別にして、日本は生活する環境としてはトップクラスであることは間違い無い。
四季折々、山紫水明、風光明媚と表現されるが、海洋性気候も相まってまさに日本に住んで不満を言うこともない。
それに最近では、所得も平均寿命も世界のトップ、あるいはトップクラスだ。オリンピックで金メダルを取るのもたいしたものだが、「生命、財産」というのはスポーツや名誉よりさらに上だ。
だから、日本人は「生命、財産、環境」という点でもっとも恵まれていると言える。
・・・・・・・・・
日本人に生まれて良かった。
今年から、小さいことに気を取られずに、日本人に生まれたことを感謝して、生活をしよう。
でも、少し不満がある。
・・・・・・・・・
せっかく、年金を積み立てたのに、いざ歳を取ったら年金が来ないかも知れないというのだ。途中で社会保険庁が金額を改ざんすることもあるらしい。
せっかく、環境になにも問題が無いのに、ダイオキシンだと言ってたき火もできないし、焼き芋も食べられない。ゴミが溢れているわけでもないのに、朝早く、ゴミを分別して出さなければならない。
せっかく、こんなに良い季候なのに、そして、むしろ少し寒いのに、温暖化を防止しようといって政府はいろいろ言ってくる。
せっかく、これほど所得も高いのに、政府が国債をだして借金ばかりしているので、すでに個人資産の総額と国債の借金がほぼ同額だから、貯めたお金は将来、全部、増税でなくなるのが確定した。
せっかく、大学も多く、勉学する場所も整っているのに、塾通いしたり、受験勉強をして暗い青春時代を送らなければならない。
せっかく、高速道路がこれほど整備されているのに、天下り団体にお金を回さなければならにということで、髙い通行料を払っている。先進国で高速道路が有料のところは珍しい。税金で作っているのにさらにお金を取られる。
せっかく、世にも珍しいぐらい泥棒や殺人の少なかった日本なのに、「してはいけないことはしない」という教育を怠って、玄関の鍵を掛けなければいけなくなった。
せっかく、「善意にはお金はいらない」という社会だったのに、すべてはお金で処理するようになった。
・・・・・・・・・
年金、環境、教育、道路、安全・・・なにをとっても、せっかく素晴らしい日本だったのに、政治や偉い人が全部、ダメにしてしまった。
総退陣してくれないかな・・・政治やエリートがいなければ日本はずいぶん良い国で、気楽な生活ができるのに・・・政治家がお金を持たないで、国民がお金をもって自由に使えば素晴らしい日本になるのに・・・会社のお偉いさんが威張らなければもっと張り切って仕事ができるのに・・・
身を捨てて日本のために生きる、そういう指導層が欲しい。
どうもよくよく考えてみると、日本という国は、気候、風土、文化、国民・・・全てが素晴らしいのに、わざとそれを壊して国民全部で苦しんでいるように見える。
ある冬の日、雪に閉ざされた北国の美しい景色を見ていたら、「ひょっとしたら、この美しさも人間生活の醜さで消えているのかな?」と思った。
今年こそ、政府や自治体が個人生活に口を出さないようにしてもらい、くったくなく明るかった江戸時代の祖先にかえって、僕たちも毎日をノビノビといきたいものである。
(平成22年1月2日 執筆)