かつて、日本人の平均寿命は43歳でした(1920年)。
なぜ、43歳で人生が終わるかというと、女性は出産、子育て、炊事、洗濯などで40歳にもなると体がボロボロになったからです。
男性も同じで、毎日の過酷な筋肉労働と冬の寒気の中での仕事が体をむしばんでいきました。43歳で「もう使えないからだ」になったのです。
そんなときには「少しでも楽になりたい」と思うものです。洗濯機、冷蔵庫、土木用自動機器、耕耘機などはこのような希望から生まれたものです。
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ところで、現在の日本は平均年齢が80歳を超えて世界一です。人間という生物の寿命は最大でも120歳ぐらいですし、頭脳の状態も考えると、そろそろ限界に近くなってきたことを示しています。
このような長寿をもたらしたのは単に医学・医療だけではなく、むしろ「楽な生活」と「衛生的な環境」がもたらしたものです。今では70歳を超えてもお元気な方は当たり前のようになってきました。
そして、かつての日本とは正反対に、モノがありすぎるので、「もったいない」と考える人たちが「もう少し節約した生活を!」と呼びかけています。
「地球温暖化は危険だ」と考える人たちもまた、「もう少し活動を減らすのは国民的義務だ!」とまで言っています。
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確かに、豪華にしようとすればきりがありませんが、現在の生活はそこそこなんとかやっていけるような気がします。数字で言えば国民全体で約500兆円ほどの総生産ですから、まずはこのあたりで立ち止まっても良いかと思います。
ところが、日本中が「景気回復」の大合唱です。景気が悪いと言っても、総生産量から言えば6%ぐらいの減少ですから、平均してみると、年収が500万円の人が470万円になるということで、そのぐらいは何とか我慢できないのでしょうか?
つい最近まで言っていたこと・・・生活レベルを少し下げて環境に優しい、心の豊かな社会を造りたい・・・というのはどこに行ったのでしょうか?
こんな当たり前のことが言えないのは、「おまえは裕福かも知れないが・・・」とか、「臨時職の人は大変だ」という声が強いからです。
それなら「もっと節約しよう」という呼びかけは何でしょうか? 節約すれば6%ぐらいはお金が余るでしょう。だから、「生活」という意味では、不況で困るということはないと断言しても良いと思います。
不況に問題があるとしたら、次の二つと思います。
一つは、ニートがもてはやされ、あまり我慢しないで職を変える人たちが不況で困ったということですが、これは当然です。
職業というのは歯を食いしばって我慢すれば景気の波によらずに生活ができるけれど、しょっちゅう、少しでも待遇が良かったり、気楽に働けるところを探していれば、不況になればピンチになる・・・これは当たり前です。
自分でニートや臨時工を選択した場合は、自分の責任ですから、不況になって困るのからといって苦情を言ってもらっては迷惑というものです。人間は魂がもっとも大切なのですから、職業が定まらない人もその人の考え方であり、それを尊重するべきでしょう。
少し厳しい言い方ですが、好況の時は気楽に、不況の時は助けてくれというのは、恥を大切にする日本人のすることではないと思います。
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二番目が「中小企業が倒産する」ということです。これまで自動車の部品を作っていた会社が受注が2割、3割という月が続き、とうとう、資金繰りに行き詰まって倒産してしまうという場合です。
このような中小企業は「創業以来の社員」も多いので、不況だからと言って大企業のように首を切ることもできず、不況は生死をわけるのです。
でも、経営者はもう少し慎重に考えてみなければならないでしょう。
日本の経済が「まとも」になるには、「内需の拡大」、つまり「自分で生産したものはできるだけ外国に輸出せず、国内で売ろう」という政策をとってきたはずで、前川レポート以来、それが基本になっています。
ものには程度問題がありますから、日本のように資源が不足する国は工業製品の輸出は必要なのですが、それが5割を超えるようなことになれば、外国に何かがあると国内が破綻するということになるからです。
でも、実際にはアメリカを中心として日本の工業製品の多くが輸出されていましたから、アメリカのサブプライムローンの破綻という日本にはほとんど関係のない事件で、日本経済が大きく傾きました。
経営者でなくても、考えることができる大人であれば、そのぐらいなことはとうの昔にわかっているはずです。好況の時に自分に都合のよい職を転々として不況の時に困るように、アメリカに依存していればアメリカが傾いたら自分も一緒にやられます。
まして、アメリカの選挙権を持っていないのですから、自分の会社の運命はアメリカ人任せと言うことです。
それは個別の中小企業の経営者の判断ですから、アメリカが良いときには遊び、アメリカが傾いたら倒産するという経営でも、アメリカに影響されない方針でも、それはどちらでも良いのですが、アメリカが金融崩壊したから倒産するというのは「環境の変化」ではなく「自分の判断のミス」と思わないとこれからも同じことが起こるでしょう。
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自民党政治が悪かったと言っても、もともと小泉さんを支持したのも我々ですし、アメリカ一辺倒政策を続けたのは小泉さんですから、これも「我々の責任」です。
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ところで、「不況」を抜け出すとしたらどうしたらよいのでしょうか? エコポイントでとりあえず家電製品を買い、アメリカが回復したらまたアメリカに売るというのでは解決になりません。
不況はそれに耐えてこそ、次の繁栄のバネになります。
経済の基本は「新しくよりよいモノやサービスを提供する」ということで、それに必要なことは補助金ではなく「頭の働き」です。
頭の働きをよくするためには、「政府の言うことを鵜呑みにしない」、「家畜的発想にならない」、「元気で明るい」、「よく勉強する」、「若い人を大切にする」などで、そんなことは決まっているように思えます。
私が「日本人総家畜化計画」が進んでいて、思考停止の日本人をつくるのが一番、危ないと言っているのはこのことです。
また、自分だけのことを考えずに、将来の日本の繁栄のためには少し自分を犠牲するぐらいのことはいるでしょう。
「そんな悠長なことを言っていては」と言わずに、アメリカに揺さぶられたことを恥ずかしいと思い、本当に日本が自立した国家になるような方向に向かうことが、将来の日本を明るくするために大人が選択するべきことでしょう。
私は、「CO2などどんどん出した方がよい」と言っています。一見して乱暴な発言のように見えますが、「長い目で、日本の将来を大切にするにはどうしたらよいか?」と真剣に考えれば、多くの人が同意してくれると信じています。
(平成21年12月9日 執筆)