天然ガスを燃やして電気を作ると、石炭よりかなりCO2が減るとされている。

電力中央研究所の計算では、1kWhの電気を得るときに出るCO2の量(g)は、石炭火力の場合、975g、石油なら742g、 そして天然ガスは 600gぐらいだ。

石炭   

975

石油   

742

天然ガス 

600

だから、石炭火力発電所を天然ガスに変えると、CO262%になると言って政府は電力会社に天然ガスを使うことを半ば強制している。電力会社としては石炭の方が安いので、消費者には良いのだけれど、なんと言っても認可権を持っている政府にたてつくとろくなことはないので、天然ガスの発電所を作っている。

沖縄などもその一例だ。

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あたかも当然のことのように見える、このことは「20世紀の環境無視型思考」によるものなのである。

20世紀は科学技術が進歩して社会は大きく変化した。鉄道、自動車、家電製品、電気、ガス、コンピュータ、電話・・・など私たちの生活に欠かせないもののほとんどが20世紀の産物である。

しかし、若干の問題もあった。それは「部分だけを考えて、全体を見なかったこと」である。

自動車を作るのは悪いことではない。重たいものを容易に移動することができるし、寒い冬に病気の子供を病院に連れて行くことができる。

自動車そのものは悪くはない。

でも、自動車を作るとガソリンを使い、大気を汚し、交通事故を起こし、道路は舗装しなければならない。だから、エコカーという変なものが登場する。

エコカーがエコであるはずはない。若干、燃料消費量が少ないぐらいであり、車重は大きく、電気自動車になっても電気をおこすには火力発電所か原子力がいる。

自動車を走らせるとCO2がでて、気温が上がり、その結果、北極の氷が溶けてシロクマが困る・・・だから自動車を走らせるのを控えよう・・・とみんなが言っている。

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このような「全体を考える」という姿勢で、天然ガスを考えると、天然ガスはガス(気体)だから、輸送中にロスがでる。そのロスは「天然ガスが大気中に漏れる」ということであり、ロシアからヨーロッパへの天然ガスパイプラインから漏れるメタンなどのガスは全体の5%と言われている。

CO2とメタンとを比較すると、「温室効果」はメタンが21倍も大きい。つまり、天然ガスを燃やしたときに出るCO2を減らそうとしても、輸送中に漏れるメタンがあるので、それも計算しなければならない。

そこで、先ほどの電力中央研究所の計算を例に取ると、石炭がキロワット時975グラム、天然ガスが600グラムだが、天然ガスは5%漏れて、それが21倍の効果を上げるので、温室効果としては、2.05倍になる。つまり、1230グラムのCO2に相当することになる。

天然ガスの方が石炭より温室効果が高い。

石炭    

975

石油    

742

天然ガス 

1230

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なぜ、このような簡単なことを電力中央研究所のような優れた研究者が多いところで間違えるのだろうか? たとえば私が研究会に出席して、上で示したような計算の結果を示して質問すると、答えは決まっている。

研究者 「ええ、この計算は輸送中の漏れは計算していません」

武田  「でも、実際には漏れるのですから、計算に入れる必要があると思いますが。」

研究者 「武田さんはそうかも知れませんが、これはあくまで燃焼したときにどのぐらいのCO2を出すかという計算です」

武田  「それなら、環境問題そのものがなくなってしまうのではないですか?」

研究者 「それは知りません。私はただ燃えるときの計算しただけです」

ということだ。御用学者というのはなかなかしっぽを捕まえるのが難しい。

そしてこの計算値はその後、堂々と「温暖化を防ぐためには天然ガスを使うべきだ」ということになる。

エコカーにしても、天然ガスの発電所にしても、「その時、その時で都合の良い計算をする」というのは環境問題では当然のように行われている。このようになる原因は「環境省は温暖化を防ごうとしているのではなく、納得性のある計算をして、仕事を続ける」ということに熱心だからである。

そして環境省を中心として出される研究費にありつくにはその場限りの計算すると獲得できる。そして最後は「環境税」となる。

そのもっと簡単で典型的な例が、レジ袋の追放だったり、クールビズだったりして、国民は我慢を強いられるのだが、さっぱりCO2は減らないという結果に陥っているのだ。

(平成211129日 執筆)