数年前、私が京都議定書というものを理解しようと思って調べている時だった。
調べを進めていくと、アメリカが批准しなかったのはブッシュ大統領の考えではなく上院が全会一致で可決したバード・ヘーゲル条約だったことがわかった。
次に、1990年基準というのがヨーロッパの陰謀であり、日本はごまかされたことがわかった。
そして、最後に京都会議の議場で日本の役所が仲間割れしていることがわかり、唖然としたものである。
「なんで、NHKが報道してくれなかったのか!」と思ったものである。
なにしろNHKには受信料を払っている。そして最近では「受信料を払わなければ訴える」と高圧的に出てきた。それにしては、せっかくNHKを信じて見ていた私にこれほどまでの誤報を見させたのか、それで「受信料不払い」などと言っても、いわば「欠陥放送をして受信料だけ強制的に取る」というのだから、それは納得できない方が普通だろう。
その後、「政府と経団連で密約があり、「経済界には規制しないけれど、国民にCO2の削減を呼びかける」という事実があったことを知り、さらにそれをNHKが知っていたことを知るに及んで、NHKは視聴者のための放送局ではなく、政府の代理人であったことを理解したのである。
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今、2020年にCO2を1990年を基準として25%削減するという政策について調べている。
そうするとまず、難しい問題に突き当たる。それは「1990年のCO2排出量が定まっていない」ということだ。たとえば、JCCCA(地球温暖化を取り扱う天下り団体)は次のグラフを出しているので、1990年の排出量は11.45億トン付近である。
これに対して環境省が発表してる1990年のCO2排出量は、12.55億トンで、実に1億トン程度も違う。環境省は1990年のCO2排出量を多く見積もって、楽をしようとしている。
さらに、政府の統計局のデータは2006年版と2008年版で1990年のCO2排出量の数値が違う。まったく困ったものである。
CO2排出量は単純な計算では、石油系エネルギーの消費量によって決まる。だから、消費量の統計がしっかりしていれば、中学生でも間違わずに計算できるものである。
このような時に「著者」はとても困る。JCCCAのデータを使えば「環境省のデータと違うではないか。武田はいい加減だ」と言うことになる。
さらに、CO2排出量という数字は、
1) 学問的にCO2排出量が計算されている場合、
2) メタンなどの温室効果ガスと合計されている場合、
3) 温室効果ガス全体から森林吸収分(学問的には間違い)や排出権を差し引いたもの、
などがあり、統一されていない。
数字が統一されていないのは、国民を適当にコントロールしようとしている政府にとっては都合の良いことだから、これを積極的に修正しようとはしない。政府の統計局が数字を変えてもその理由はまったく明らかにされないのだから。
まず、ここまでで一段落して、結論を出しておきたい。
1) 日本国民は不幸にもNHKが視聴者を裏切る報道を続けているので、NHKを見ても現状認識を誤るし、かえって損害になる。見なければ何とかなる。
2) 政府は1990年のCO2量などの重要な数字を数個だし、それでごまかそうとしている。
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ところが、ここに大きな問題が潜んでいる。
本来、このような学術的な数値は官庁からでるのではなく、学会や論文を見て参考にするのが普通である。
ところが温暖化のような環境関係のことについては、あまりに政治的に汚れてしまって学術的な論文がないといっても良いような状態なのである。
学会の多くの先生は残念ながら青虫と呼ばれる研究費をもらって御用学者的になってしまっている。研究費をもらっていない先生は「反対派」と見なされて、すでに色分けされているのだ。
もともと政府の数字は政治的でいい加減だからこそ、憲法が学問の自由をその23条で定めてあるのに、それが機能していない。人によっては私に「なんで、政府の数字を使わないのか!武田独自のデータを使うとはけしからん!」というが、私に言わせれば、少し憲法と学問の自由が定められた経緯を勉強して欲しいと思う。
学問では「自分の考えが・・・だから、数字をいじる」というのは厳に戒められることだ。「ダイオキシンは危険なのだから、間違いの報道も許される。間違った報道があったかも知れないが、そのおかげでダイオキシンが追放された」などと言う変な言い訳は学問では通用しない。
できるだけ事実をそのまま整理するのが学問だ。
その点では、実に「事実」を書きにくくなった。政府、官僚、大企業、先生、専門家はすでに当てにならない。頼りになるのは「事実を知りたい国民」がたった一つ残っているだけだ。
(平成21年11月29日 執筆)
(注) このホームページは事実を基本とし、事実の記載については著作権が及ばないことから、適宜、データを利用させていただいている。これまでも問題はなかったが、一応、断っておきたい。それは、最高裁判例にもあるように、著作権が存在するのは、1)50年間(50年以上たったものは原則としてなし)、2)創造物(創造物ではなく、単に事実を整理したものは除く)、3)営利的目的 (学術的目的で営利ではないもの、教室での使用な除く)、であるからだ。また、国民の税金を使っているものについては、よほどの創造物ではなければ著作権は及ばない。税金を払っている人は税金で運営されているところからのデータをそのまま事実として使用するのは妨げられない。