新型インフルエンザの流行が新しい段階に入った。国立感染症センターのデータでは、40週目(感染症は1月1日の週を第一週として週で数える)に秋の流行が始まった。
グラフを見ると、毎年の季節性インフルエンザが第9週(2月の終わり)頃に流行のピークが来るのに対して、今年は、普通の流行性インフルエンザが第3週に来て、新型インフルエンザが第11週に流行したことがわかる。
夏になって一段落した後、秋口から流行が始まり、第40週からまた患者数は立ち上がっている。
ところで、縦軸は国立感染症センターがデータを取っている「ある特定の医療機関」での受信者数の合計を平均している。
秋口の流行は全国的にはまだ増加途中だが、第40週から第41週にかけての患者数の増加は少し少なくなってきたような感じもする。
一方、秋の新型インフルエンザの発症で先行的な役割を果たしている札幌のデータを札幌市衛生研究所のデータから調べてみることにする。
札幌市の秋の新型インフルエンザの流行はきわめて顕著で、毎年の冬に流行するインフルエンザを遙かに凌駕した。
最近の流行では2005年の時に定点観測平均で60人だったのに対して70人を越した。しかし、この時点で「新規患者数の増加率が下がった」ことで、やや安心できるかな?と期待していたら、案の上、最新のデータでは下降しはじめた。
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勝負の時である。
流行とは面白いもので、ある地方に感染症がはやると、一人の人が他の人に移す数によって流行の速さが決まる。
たとえば、普通の季節性インフルエンザでは1.3人だから、1人の人が1.3人に感染させる。この場合、10回目で13人、累計55人が感染する。
新型の場合、今のところ、この数字が2.2人と言われている。だから10回目で2600人、累計4900人にも上る。だから、流行は急速である。
でも、やがてピークを打つ。その形は正規分布と呼ばれる形をしていて、滑らかに立ち上がり、やがてもっとも速度が速くなり、次第にピークに近づき、その後、ほぼ同じような曲線を描いて下降する。
毎年、同じ曲線を辿っているので、それと同じなら札幌は流行がピークを打って、下降に入っていることになる。
でも、今回は「新型」だから、今後の状態は判らない。いつもなら最終的に国民の10人に1人が感染して終わる。不思議なことに感染が拡大すると共に、感染者と接触する機会が多くなるのに、終わる。
何ごとにも全滅というのはまれにしか起こらないのが不思議だ。
また、面白いことがある。新型インフルエンザは第11週で第一のピーク、そして第42週付近で第二回のピークが訪れるとすると、今後、毎年、インフルエンザが流行する時期がずれるのか、それとも定着すれば春の流行になるのかということが第一。
第二には、今年、従来型の季節性インフルエンザが流行するのかという点である。国は季節性インフルエンザのワクチンも少なめに用意してあるところを見ると、将来を正確に予想するほどにはインフルエンザ流行の学問が進んでいないのだろう。
最後に、埼玉の年齢別感染状態を示してみる。
「新型インフルエンザは子供だけ」とよく言われるが、本当にそうだ。50才以上の感染者は驚くべきほど低い。これが免疫の関係なのか、それとも別の要因なのかは不明である。
若者が感染して元気がないとき、年取りが頑張って日本を支えよう!
(平成21年10月31日 執筆)