歳をとると良いことが多いとはよく言われるが,本当にそうだ.
私は生来,体が弱く,2才の頃に手術をして,それから数回,外科のご厄介になった.
高等学校から大学にかけてもっとも体の調子の悪かった頃だった.学校に行くのに四苦八苦し,仕事についてからも最初の年に2ヶ月も休んだ.
私は学校の成績は良かったので,近所のお兄さんは病気ばかりしている私に「クニちゃん,大変だね。でも,天は二物を与えずって本当だね」と私に言った.おそらくは慰めてくれたのだろう。その人とも長く会えないでいる。一言,感謝したい.
結婚した頃,妻は私の生活ぶりと体の調子を見て,「この人は永くないわ」と思ったそうだ.悪いことをした.
40才を少し超えた頃だっただろうか,会社につとめていた私は,2ヶ月後の若い人の結婚式に招待されると「それまで体が持つだろうか」と不安だった.
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でも,歳を取った今は健康だ。
この年になると,「健康」という内容自体が変わってくる。もともと2ヶ月後などはまったく判らない.体の調子が悪いのは日常的であり,それは歳のせいであって健康かどうかの問題では無い.
今日一日が過ごせれば「健康」と言える。
ときどき「体の方がいかがですか」と答えて戸惑うことがある.40才のころは2ヶ月後が不安だったが,それは私はまだ数10年は生きるつもりだったから,2ヶ月後は不安だったが,今はそうでは無い.今日だけあれば私には十分だ.
だから,今は健康だ。
病気でも健康,体の調子の悪いときでも健康だから,気が楽だ.子供がどうの,生活費がどうの,生命保険がどうのと気をもまなくても良い.
そして返って今の方が健康に注意しているかも知れない.今日一日,元気でいたいと思うと,なんとなく元気になる。
歳をとるということはよいことだ.それは私の人生の最大の不安の一つだった「病気」から自分を開放してくれたから.
(平成21年9月27日(日) 執筆)