安倍,福田,麻生と続く3首相が任期1年にして交代した,もしくは交代させられたということが日本にとって大きな損失になったことを述べた.

そしてその一因として,新渡戸稲造の「武士道」から「富めるものは智に害あり」という言葉を紹介した.

為政者たる者,富を嫌い,節約を尊ぶことによって高い人格を保ち,公人として腐敗の誘いから逃れることができる.

しかし,現在の日本の国会議員はほぼ全員が,「智を富みに害されている」と私は思う。特に若くして当選したり,二世,三世がまともな精神状態を保つはずもない.

もともと,日本の国会議員の歳費がこれほど多いのは,日本の伝統ではない.太平洋戦争に敗れた日本はアメリカ軍に占領され,マッカーサーの意のままに統治された.

その時に,マッカーサーは日本に民主主義が根付かなかったのは,国会議員が社会から尊敬されていなかったからであり,尊敬されるためには歳費を上げる必要があると考えたからである.

さらに国会議員には,国民年金とは違う「議員年金」なるものもでき,5期も議員をやると1億円を超える年金となる。

それで,日本の国会議員はまんまとアメリカの術中に入り,戦後は富によって智を害されてきた.このことがアメリカの長期的陰謀であると考えるのは少し行きすぎているが,結果として術中にはまってしまった.

さらに最近ではオバマ大統領をまるで日本の大統領のように言うインテリが多い.「オバマ大統領がグリーンニューディールという政策を出した.さすが大したものだ.早速,日本も日本版グリーンニューディール政策を始めなければ」とか,「オバマ大統領は大したものだ.核兵器を全廃する考え方を出した.広島市長も賛意を示している」などがそれだ.

グリーンニューディール政策にはなにも新鮮味がない.単なる不況下での雇用対策でしかない.

また「原爆」(核兵器)についてアメリカは発言権がない.なにしろ世界で唯一,現実に原爆を使った犯罪国家であり,現在でももっとも強力な核兵器を持っているからである.

少し前に国連でベネズエラのチャベツ大統領が,

「ブッシュ大統領は悪魔(evil)だ」

と発言し,日本のマスメディアはそれを辛口で報道した.しかし,かつてブッシュ大統領が,「悪の枢軸」と呼んだとき,その英語は

“axis of evil”であった.

日本のマスメディアはブッシュの方は,evilを「悪」と訳して,ブッシュを称えて,名指しされたイランと北朝鮮を批判した.

ところが,チャベツ大統領の場合は,evilを「悪魔」と訳し,チャベツ大統領の品位を問題にした.

現代の日本のマスメディアの首脳部は「富で智を害されている状態にある。だから,アメリカは力が強いから正義である,勝者は正義であり,力の弱い者は劣るという強い信念を持っている。

このようなアメリカ的な考え方は果たして高いレベルの文化なのだろうか.多くの知識人がアメリカを賛美するが,それほどアメリカ文化は優れているのだろうか?

原子爆弾,金融崩壊,環境破壊,そして世界覇権とテロのいずれをとってもアメリカ文化は研究対象として興味あるものだが,尊敬の対象にはならない.

もちろん,選挙もそうだが,アメリカの選挙は金まみれであり,そこから出てくる人が品位を持っているはずはない.

(平成21年9月27日(日) 執筆)