どんなことでも,いったん,大きくズレるとなかなかまともなことは通らなくなる。

貧乏なころの日本が,そのまま残って巨大な矛盾になっている一つにNHKが

ある.

たしかに,一家に一台のラジオがあり,夕方になると家族みんながラジオの前に座って「三つの歌」に興じた頃,NHKというのは必要であり,楽しい時を提供しただろう.

ラジオ放送はいくつかしかなく,聞く方には洗濯することもできなかった.だから,NHKの受信料というのもそれほど奇妙ではなかった.

でも,白黒テレビになり,カラーテレビになり,チャンネルが増え,BS,CSができ,今や100チャンネルを超える放送を聞くことができる.

また,日本人の生活様式も多様化し,家族4人,かならず夕方になると「オヤジ」が会社からかえってきて,風呂に入り,焼酎を飲み,そして一家そろってテレビを見る家庭がどのぐらいあるだろうか?

「テレビを買ったら,NHKというたった一ヶのテレビ局の受信料をとる」という程,奇妙な制度はない.なぜ,この制度が残っているかというと,

1) NHKはいまや自由契約で,契約をとるほど良い番組を提供できない。

2) NHKに働いている人の生活保護をしなければならない.

3) 政府に都合の良いことを放送してもらわなければならない.

ということだ.

・・・・・・・・・

こんな不当なことが残っているのが不思議だが,そうなると,日本の裁判官は「御用裁判所」になる.

2007年,大阪地裁堺支部であった判決は驚きだった.BSを受信できる「機械」を買った人が「自分はNHK―BSを見ないから」という理由で受信料の支払いを拒否した.

そうしたら,事件を担当した谷口幸博裁判長という人は「放送法に基づく受信規約は有効で、原告は衛星カラー契約を締結する義務を負う」として、請求を棄却した。

受信装置を設置した人に「放送を見る意志の有無にかかわらず契約変更を義務づけることは正しい」と言ったのだ.

本人の意志に反して,「契約変更は義務である」というのだから驚く.

・・・・・・・・・

2009年,東京地裁の綿引謙裁判長は,NHKの受信料を払わない人に対して,不払いの受信料の全額の支払いを命じた。「2人は元々自由意思で契約を交わした。契約継続も放送内容や経営活動を是認するよう認識の変更を迫るものではない」といった.

「放送法はNHKの放送を受信できる受信機の設置者に受信料支払いを強制している。民放の視聴を妨げる規定ではない」ということだ.

・・・・・・・・・

裁判官は体制維持である.憲法や民法,それに国民の自由意志,基本的人権など考えたこともない.もちろん民主主義などほとんど信じていない.

一体,NHKだけが受信できないテレビというのを裁判官はどこで見たのだろうか?

NHKの受信契約は自由意志???裁判官はNHKの受信料を取り立てに来る人がどんなに庶民を脅しているのか知らないのだろう。

イヤ,裁判官は実は知っているのだ.それが恐ろしい事で,今の裁判官の多くが「平気でウソをつける」という特徴がある.

NHKだけ受信できないテレビがあるとは思っていない.受信契約が強制的だということも知っている。それでも,180度違う判決をかける・・・それが,現代の裁判官であり,いわゆる「偉い人」なのである.

(平成21812日 執筆)