最近,日本の社会を見ていると,「誠意ある普通の人」が他人を平気でだましていることを目にする。不思議なことだ.

社会が複雑になって,自分が言っていることが相手にどういう被害を与えているのか判らなくなったのではないかと思う.

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その一つが,大麻を所持していたというので,まるで学生を極悪人のように報道するマスメディアや知識人だ.

私は大麻の研究を20年来,続けているが「大麻が痲薬である」という専門家の報告を見たことはない.日本では法律で禁止されているから罰せられるのは仕方がないが,極悪人扱いはあまりにも不条理である。

「大麻はゼッタイに許せない」とテレビで言っている人を見ると,「この人はどの報告書を見たのだろうか?」と本当に不思議に思う。まったく勉強しなくても人を極悪人のように言うことができる時代なのだろう.

もちろん,「痲薬は社会の敵」であると信じている人は多い.それは間違っていないだろうが,「大麻は痲薬かどうか」についてまったく知識が無いのに,他人の人生を台無しにするほどに非難するのは,やはり誠意ある大人とは言えない.

大麻の所持を大きな犯罪のように言うのは「リンチ」であって「法」ではない.パンを盗むことは悪いことであるし,それが社会に蔓延したら社会の道徳は崩れるだろう.でもそれだけで死刑にしてはいけない.

法というのは「目には目を」が精一杯であり,パンを盗んで死刑にするのは法では無い.大麻を所持した人が社会に悪いことをした範囲を超える罰を科するのはリンチなのである。

今の日本のマスメディアは「神様」だから,法の代わりになって大麻を所持している若者にリンチをくわえている。それは法治国家としては正しいことではない.

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自治体の「CO2を削減して,快適な町にしよう」というキャンペーンもほぼ同じだ。温暖化について知っている私はこんなハッキリしたウソを言うことはできない.

ある自治体で「税金を使って」,子供たちに「CO2を減らしましょう」と呼び掛けている。漫画ではメルヘンのような感じで子供たちが遊んでいる。洗脳教育以外の何者でもない.

そして,CO2を減らしても気温の上昇は変わらないこと,世界では日本以外のほとんどの国がCO2の削減をしていないということは決して子供に伝えない.

CO2を減らせば未来が明るいというような間違った印象を与える.国連はIPCCなどのところのように世界全体が相手ならまだCO2を減らそうと呼び掛けるのは意味があるが,人口が少ない日本の市で,世界に率先してCO2を減らしても何もおこらない.

市民にとっては無駄骨である。台風をボートで止めに行ったり,B29に竹槍を投げるのと同じだ.専門家はCO2を減らすことが市民にとって無駄骨であることを良く知っている。

でも,役人は違う.それによって,自分の地位が安泰になる,税金はもらえる,天下り先はできる,中央の霞ヶ関の役人には評価してもらえる・・・苦労する市民などどうでも良いのである.

でも,その自治体の役人は「真面目なお父さん」である.なぜ,真面目なお父さんが「市民の苦労はわからない」のだろうか?

二つの例を挙げたい.

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写真の左はこれから東京を爆撃しにいく戦略爆撃隊長である.満々たる自信,正義の人,その人が爆弾を落とした下にはすでに軍隊はなく,幼子を育てている母親となにもしらない赤ちゃんだけがいる.

爆撃隊長は自分が爆弾を落とすその地上に,お母さんと赤ちゃんがいるのを知っている。そしてそれが自分の連れ合いと子供なら爆撃はしないだろう.

自分の家族ならしないが他人なら平気でする。それが「真面目な人間」,「正義感のあふれる人間」のする事なのだ.

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右は原爆を作った「原爆の父」オッペンハイマーである.彼は当時のアメリカのトップの物理学者だったが,悪魔の兵器,原爆を作った。

後に原爆は,広島と長崎に落とされ,彼はプリンストン高等研究所の教授に転身したが,呵責の念に駆られ,精神異常に近い状態で死んだ。

左はその原爆を長崎で受け,両親を亡くし,最後に残った弟も数日後には死に,弟を埋葬するために共同墓地の前にたたずむ少年である.実に立派だ.

人は学問を学ぶとダメになる。

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爆弾を落とす人は,爆弾を落とされてその下で苦しむ人が判らない.

自分で調べもしないで,ただ大麻を持っていたからということで前途有望な大学生の人生を奪う人は,人の心を持っていないのだろう。

人口100万人の地方都市で,CO2を減らしても,アメリカも中国もロシアもやっていないことを強制し,あるいはやらざるをえない雰囲気を作り,その自治体の若い人の活力を奪い,自分の地位を保全する.役人とはそういう人種なのかも知れない。

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世界一流のスケート選手は,あふれる程のCO2を出して練習する。氷をリンクに張るのだから,それは大量のCO2を出す.

オリンピックの水泳の選手は,膨大なCO2を出して練習をする.プールと言えば飲み水を節約するどころの騒ぎではない.水も使うが,ものすごくCO2をだす。

それなのに,市民にはCO2を削減しろ,冷房を我慢しろ,車に乗るな,家庭できる省エネとはと呼び掛ける.それは道徳であり,温暖化とは関係がない.

「優れた人はCO2を出しても良いが,普通の人はいけない」と役人は言う。さすが,庶民の辛さをしらない役人である。

(平成21721日 執筆)