ハイブリッドカーはエコカーと言われる。このことを環境の本質論からすこし考えてみる。
ある車が1リットルのガソリンを入れると10キロ走れたとする.その車が改良されて1リットルで20キロも走れるようになる。燃料消費率は2倍に向上したのだから,とてもエコのように見える。
でも,それは本当だろうか? 実は,このように「部分」だけに注目するから環境は破壊されたのだ.20世紀型思考と言っても良いし,「おじさんの考え」と言っても良い.
まずは物事を単純化して「燃料消費率を改善する」という効果を見てみよう.
燃料消費率が2倍良くなり,世界中の車の走行距離が同じなら,ガソリンの消費量は半分になる。そうするとガソリンの値段が下がって買いやすくなるので,自動車が増える。
仮にガソリンの生産量が同じなら,燃料消費量が2倍よくなると,自動車が2倍に増えなければ,ガソリンは消費しない.あるいは,一台あたりの走行距離が長くなり,それだけ多くのガソリンが消費される。
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この関係は歴史的にどうなっているだろうか? つまり,省エネルギーをすると,「消費側」から言うと「エネルギー使用量が減る」のだが,「生産側」の生産量が同じ場合には,個別のエネルギー消費量が減っても,全体としては消費量が変わらない.
自動車の場合は台数と走行距離が増え,冷蔵庫の場合には若干の台数の増加と内容積が増える結果となる。エアコンでは単純に台数が増えることが多い.
そして,日本全体のエネルギー消費は増えるのが歴史の示すところである.
産業革命以来,人類は「省エネルギー,効率化」をまっしぐらに進めてきた.その結果,人間は「定められたエネルギー」の中で最大の活動ができるようになり,それが大量生産,大量消費の原動力になった.
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大量生産時代も環境時代も,社会のメカニズムは変化していない. 同じ行為は同じ結果を招く。つまり,「省エネルギーは生産量を増やし,資源の枯渇を早める」ということになる.
ハイブリッドカーは自動車の技術としては「進歩」である.でも進歩は資源の消費量をふやす。良い自動車ほど,今のところ,生産量を増やしてしまう。
仕方がない。それが現在の環境問題の根源だからである。なぜ,江戸時代には資源の消費が少なかったのかというと,効率が悪かったので,活動量が少なく,従って,資源の消費量が少なかったのである.
ハイブリッドカーは構造が複雑で,貴重な資源を多く使う。そして燃料消費量が良い.「エコ」という点では最悪だ.
それはトヨタやホンダが悪いわけではない.JR東海が計画している「東京―名古屋」のリニアーモーターカーはさらに数倍「エコ」には悪い。
技術のシンポは「エコ」とは相反する。東京を上空から見れば,そんなことは説明するまでもない.
(平成21年7月1日 執筆)