2009年5月1日,今日ぐらいインフルエンザについて,日本人が近未来を予想しなければならない日はないだろう.何しろ,世界的に大流行の兆しが見られると言われ,さらに横浜で患者が発生した可能性があると報道されている.

これまでインフルエンザについては,(1),(2)と二回にわたって整理を進め,おおよそ自分で判断できるまでになってきた.

そして,これまでの狂牛病や鳥インフルエンザの時の大騒ぎと違い,マスメディアもある程度の自粛をしながら報道し,「大変なことになった」という報道と,「たいしたことは無い」という報道を並行して進めている。

大変,結構なことである。なにしろウシからの狂牛病で死んだ人は日本には一人もいないが,狂牛病のウシを診断し損なったとマスメディアから非難されて,自殺した若い女医さんがおられた.

さらに,鳥インフルエンザでは家畜に関する管理で最高100万円の罰金という罪を犯した老夫婦が首をつって死んだ.この3人はハッキリとした「マスメディアの殺人」であり,今のところあまり問題になっていないが,報道自体も何らかの形でご遺族にしなければならないだろう.

ところで,明日,インフルエンザはどうなっているだろうか?

二つの予想がある.一つはドンドン感染者がふえて,どうにもならないことになるというケース,もう一つは毎年流行するインフルエンザと同じ状態になり,梅雨になると湿度が高くなるので,収まるというケースだ。

どちらになるか,誰にも判らない.判るためには学問が進歩していないといけないが,そこまでウィルス学,感染学,そして社会学がすすんでいない.

選挙があると,開票直後に当選確実がでる.これは長年の選挙の経験,事前の予想と計算,そして出口調査などがあるからである.つまり「予測する」ためにはそれをするために学問や技術が必要である。

毎年,インフルエンザが流行する。日本では毎年,推定1500万人が感染し,1万5千人が亡くなっているという。膨大な数で,現在のように世界全体でも数100人が感染し,数10人が犠牲になっているという状態は,「開票率1%」と言った段階だ.

開票率1%の時に,最終投票結果を予想するには,それなりの準備がある.5月1日の時点でもっとも参考になりそうな事実を整理してみる。

1) A(H1N1)というウィルスは,1918年のスペイン風邪の時の原因となった。

2) スペイン風邪で数1000万人が犠牲になったと言われるが,当時はウィルス自体がまだ知られていないこと,戦争中であったことなどがあり,まったく参考にならない.この情報は関係が無いと思った方が良い.

3) むしろ,新型のA型(H1N1)としては1977年のソ連カゼであり,普段より少し多いぐらいだから「パンデミック」などと騒ぐ必要は無い。このとき,ソ連カゼに似たウィルスの流行が前段階であったので,少し抑制された.

4) 豚の新型インフルエンザの流行としては1978年のアメリカにあり,今回が初めてではない.また,今回,若い人がかかっているところを見ると,類似のウィルスが20年ほど前に流行した可能性がある.

5) 今回の豚インフルエンザがこれまでのインフルエンザとどの程度の「類似性」を持っているか,まだ不明である。

6) 毎年,インフルエンザが流行すると,航空機などの移動で全世界に広まる.そこで,ワクチンの製造に当たっては世界の流行を見て準備する。だから,「世界の何処かで発生して,それが航空機などで蔓延する」というのは毎年のことである.

7) 毎年,日本だけで推定1万5000人も死ぬのがインフルエンザだから,もともと災害の中ではもっとも大きい災害に属する。

8) インフルエンザ・ウィルスはカモが発祥であるが,人間とともに生きていくウィルスであって,撲滅は難しいが,そのうち,天然痘などとともに少しずつ減らしていくことになるだろう。

9) 基本的にはウィルスの病気は一度かかると二度とかから無いが,インフルエンザ・ウィルスは突然変異するので,少し違うウィルスが新しくでてくる。

10) 人類は有史以来,インフルエンザと闘ってきた記録が多く残っている.従って,現在,生活している人間はある程度,インフルエンザに強い体質などを持っていると推定される(自然淘汰).

分からないものは分からない.現時点では,危ないか,普通のインフルエンザ程度か不明である。不明なことを無理矢理,判ったように言ってはいけない。

ただ,ポイントはある.

1) 少し注意する。この際,少し衛生的で栄養にも注意する。

2) 感染者は老人が多いか,若者が多いか.老人が多ければ新しいウィルスだから大きく広がる可能性があるが(スペイン型),若者に限定されれば,数10年前に流行した可能性があるので,広がらない(ソ連型).

3) 学問を発展させて,当確がでる時間を早くする。

地道な学問というのは本当に大切で,現在は「役に立つ学問」ということでなにか新しいものを作ることだけにお金がでるが,感染速度や経路の研究という研究を社会が支持してくれると良いのだが.

まったく苦情でもないけれど,私の専門分野では,「ものを繰り返し使う」という直接的なリサイクルの研究には膨大な研究費がでるが,繰り返し使うための「劣化の研究」,「再生の研究」にはほとんど研究費は出ないのが現状でだから.

そんな状態では,普通の人のアイディアの範囲でしかリサイクルができないので,結果的に循環型社会は到来しない.根本的な知識が増えることが危険を避け,人類を発展させると私は思う。

(平成2151日 執筆)