基本的なことを理解して一息ついたところで,少し幅を広げてみたい。趣味の時間である。

まず,人間が病気になるのは細菌のようなものに襲われるからだと分かったのは今から150年ほど前で,それまでは病気は「悪霊」がとりつくことによっておこると考えられていた。

インフルエンザでも西洋では「天体から悪い影響が来る」ということで,星の運行を観察していた.だから「影響」という意味で,インフルエンス(influence, 影響)と名付けられた。

日本では,吹く風が悪いからインフルエンザになると思って,「風邪」と名付けた。また江戸時代から「渡り鳥が病気を持ってくる」という歌が知られており,人間にも感染していたのだろう。

もしかすると,太陽の黒点が減少し,宇宙線が増え(2008年),それが地表に到達する数が増えたので,カモやブタの体内のウィルスの突然変異が増えたのかも知れない.あんがい,昔の星占いは荒唐無稽ではない場合もある.

ところで,人間の病気が悪霊ではないと分かった後も,ウィルスを発見するには時間がかかり,本格的にはドイツの技術者ルスカが電子顕微鏡を発明してからのことである。(1978年ノーベル賞受賞)

従って,20世紀の始めに流行したスペイン風邪(A,H1N1)の時には,「インフルエンザの原因がウィルスであること」すら分かっていなかった.てっきり細菌と思って「インフルエンザ菌」と言っていた.

だから,防御もできず,また戦争と重なっていた.あまりスペイン風邪を例にとってインフルエンザの怖さを強調するのは感心しない.

・・・・・・・・・

インフルエンザはもともと「鴨(カモ)」に寄生するウィルスで,野鳥は感染しているが,発病しない.発病しないのはウィルスが繁殖するところが体の一部で,繁殖が限定され,しかも毒性が弱いからである.

だから,野鳥からインフルエンザのウィルスが排泄されて,その近くにニワトリ(家禽)がいても,普通は感染しないし,たとえ感染しても発病しない.

体力が弱くなったニワトリや,ストレスの多いニワトリが感染すると,体内で繁殖し,体中で殖え,さらに毒性が強くなって本格的なA(H5N1髙病原性)になる.これが「鳥インフルエンザ・ウィルス」と呼ばれているものである.

ニワトリを庭先で飼っていればそこそこだが,何しろ何100万羽も一緒に飼育していて,運動もさせないのだから,なにか変なことも起こるだろう。

カモからは鳥,豚,馬,鯨,それに人にすでに感染しているし,今後も他の動物の体内で見つかるかも知れない.つまり,「***インフルエンザ」というのはどの動物からも起こってくる可能性がある.

豚インフルエンザが突然出てきても,まったく不思議はない。私たちが不思議に思うのは,NHKが「鳥インフルエンザの時にはそれだけ,豚になると豚だけ」を放送するから錯覚するだけだ.

動物から人間へのインフルエンザの感染の危険性は,いくらでもある.鳥だけを強調した報道の方に原因があり,私たちは突然の「豚」に驚いているだけで,報道に踊らされている.

もう少し,広げると,生物(遺伝子,体,皮膚,栄養を取る装置などをもったもの)は,常にウィルス(遺伝子と皮膚しかない)と戦いながら,また共存共栄しながら生きてきたから,「ウィルスを撲滅しよう」などというのは不可能だろう。

・・・・ここまで「雑学」というか,周辺の知識を整理することができた.基本的なことと,この雑学をよくよく読むと,おおよそ今度の豚インフルエンザを理解することができるし,どのぐらいの注意が必要かも分かってくると思う。

(平成21427日 執筆)