2009年3月16日,元毎日新聞記者,西山さんやドキュメンタリー作家ら25人が,沖縄返還にかかる資料の不公開決定の取り消しを求める訴訟を東京地裁に起こした.
このニュースはまだNHKでは報道されていないと思われる。 日本の報道界では歴史的に見て,リクルート事件暴露などとともに,1,2を争う大事件である。
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1971年,沖縄がアメリカから日本へ返還され,その時に国際法上は当然,アメリカが支払うべき「復元費用400万ドル」を日本が肩代わりた「政治的決断」があった.
この情報を入手した当時の毎日新聞,西山太吉さんはこの情報を社会党に渡し,国会で暴露されて大きな政治問題になった.
この事件はその後,男女関係のことで週刊新潮のキャンペーンによって社会的な問題となり,女性週刊誌などの報道が加わり「西山憎し」の感情が先立ち,起訴された西山さんは最高裁判所で有罪(執行猶予つき)が確定した.
この裁判の過程で,当時の最高裁判所長官が,係争中にアメリカ大使と面談するなど,マスメディア,政府,そして司法が団結して,日本国のために頑張った西山さんを有罪にして,「国益」を守ろうとした形跡がある.
日本社会は「国民が重大事実を知る権利」より,「男女の情事」を優先して,西山記者の所属していた毎日新聞の不買運動を展開した.他のマスメディアも社会の反撃を恐れて,沖縄密約の追求を止めた。
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【解説】
この西山事件こそ,戦後の日本が,真の民主主義になるかの一つのステップだった.
日本国憲法では,その第21条に表現の自由,第23条に学問の自由などを明記し,政府や他の権力に対して自由な活動を認めている。
権力はとかく「国益」などをたてに,国民に対して都合の悪いことを隠そうとする。 一方,それを報道や学者が調査して,事実を明らかにする。 このプロセスによって国民は真なる民主主義・・・つまり国民が主人であるので,もっとも重要な情報を得ることができる・・・を達成できるのである。
その意味では西山さんの功績は大きい。 当時の日本の司法は逆の判断をしたが,マスメディアは「西山さんの日」を定めて,大々的なキャンペーンをして,「民主主義とは何か?」,「憲法が規定する表現の自由,学問の自由とはなにか?」を問い直す必要がある.
日本はただ,グルメやアメリカだけにうつつを抜かす国民では無いことを示したい!
そのためには西山さんが密約を記事にして毎日新聞がそれを掲載した1971年6月18日(毎日新聞 朝刊3面)を「日本の報道の日」,つまり,「西山さんの日」にして,これを国民の祝日にする提案をしたい.
そして,誤って当時の日本社会が毎日新聞の不買運動をしたことに対する罪滅ぼしとして,私はこの際,毎日新聞を購読したいと思う。
(平成21年3月22日 執筆)