1989年から1990年にかけて,世界も日本もさまざまな意味で大きく時代が変化しました.
世界的に目を向けると,1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊して,それまで長く続いていた自由諸国と共産圏という対立体系が崩れました。
この変化は衝撃的で,ある日,突然,東ドイツが東西ドイツの通行を自由にするという発表で幕が切って落とされたのです.
当時,私はある研究所を運営していましたが,直ちに反応があり,研究の方向もずいぶん変化したものです。
国内ではバブルの崩壊がありました.現在では考えられないぐらいの高い日経平均で,4万円直前まで行き,それから折り返して,最近ではついに7分の1ぐらいになってしまったのです。
この二つは,ある意味で必然的でしたから,「タイミング」だけの問題だったのでしょう. 共産主義はその理想や経済システムは優れていたのですが,なんと言っても「対象となるのが不完全な人間」であることを忘れていたのです。
競争が無く,権力がある社会は腐敗するという古今東西の原理原則がそのまま成立し,東西ドイツが合併したときに,さまざまな面で,西ドイツと東ドイツの差に唖然としたものです。
バブルの崩壊も同じでした.株価が崩壊する寸前,「あまりに高すぎて目まいがする」と言われたものです.経済は実態部分とお金やローンだけで拡大する部分があり,どちらが本当ということはないのですが,お金やローンで拡大した経済は常に崩壊する可能性があります.
そしてもう一つ,「環境破壊」では,それまで「リアルな環境破壊」,つまり実害のある環境破壊から,「予防原則の時代」,つまり被害が無い環境問題へ大きく転換したのです.
東西対決の解消,バブルの崩壊,そして環境破壊の消滅・・・このような大きな変化を咀嚼することなく,日本は「成長の力」を失っていきます。
それは,誤った政治の舵取りによる国民の力の減退を意味していましたが,今やその影響は子供たちまでにも及び,本来なら夢と希望を持っているはずの若い人が,暗い将来像を描いています。
1990年からすでに18年が経ちましたが,私たちはもう一度,1990年問題を研究し,新しいパラダイムの世界とはどういうものだったのか,これからどう進むべきかを考えるときに来ていると思います。
特に,暗い将来を描いているマスメディアが力を持っている現在,このことは日本の未来の子供たちに大きく関係することと思います。
(平成21年3月17日 執筆)