日本は四面を海に囲まれているから,お風呂に入っているようなもので,温暖化しても,世界の他の地域より気温はあがらないと書いた。
それをもう少し詳しく理解するために,太陽が地表を照りつける光(熱)とはいったい,どうなっているのかを説明してみよう。
下の図は,拙著「日本人はなぜだまされるのか」(PHP)に掲載したものだが,太陽から100の光が上空に達すると,そのうち30は反射してしまう。 残りの70が大気に入るのだが,そのうち,23が途中で雲や大気に吸収される。
結局,地表に達するのは約半分の47である.これが,今度は逆に地表から大気の方に移動する。 水などの蒸発で24,単なる伝熱で6,そして光が地表から宇宙へと向かう分が残りの17である.
この17の内,11が大気に吸収され,6がそのまま宇宙へ行く。 もっとも宇宙へは大気から64が行くから,合計100である.
太陽から100の光が入って,100の光がでたら,地球が暖まらないのではないかと考えられるが,もし100の光が入って,90しか光が出なかったら,地球の気温はドンドン上がって,ついに灼熱の世界になってしまう。
地球の温度が一定だったり,地表の気温が一定であるということは,太陽から100の光が来たら,宇宙へ100の光を返し,地表に47の光が到達したら,地表から47の光を出すからである。
CO2が増えると,地表からでた17の光の内,11が吸収されていたのに,それたとえば12になることだ.そうなると,大気中に貯まる熱が増えて,それだけ大気の温度が上がる.
大気の温度が上がれば,今度は太陽からの吸収や宇宙への飛散などが増えるから,これから先は非常に面倒なことになるが,ともかく,そうなる.
もう少し,単純に考えてみよう。
地表に氷があって,そこに太陽の光があたり,氷がとけてついには蒸発するような熱の伝わり方を考えてみたい。
最初のその氷の温度がマイナス10℃とすると,まず太陽の光で氷が暖まり,0℃になる.もしその氷が小さくて1グラムしか無ければ10カロリーを吸収する。
そこで氷が融け始めるのだが,それには80カロリーがいる.つまり,水や氷なら80℃も温度が上がるぐらいの熱をかけないと氷は融けない.これが「北国で良く経験すること・・・太陽が出ていても道路の雪が融けないので寒い」という状態である。
それでも太陽が照り続けると,いよいよ水になった「水」の温度が上がり始める。 ところがなかなか水の温度も上がらない.それは,「水と空気では熱を抱く力(熱量量)が3500倍も違う」ということがあるからだ.
もしこの1グラムの水が,一辺が1センチの立方体とすると,太陽の方を向いている面積は1平方センチメートル.そこにすでに 10+80=90 の太陽の光が当たっている。 これに3500をかけて100で割ると,3150メートルという数字が出る。
この数字は,たった1グラムの氷(-10℃)を溶かすだけに使う熱は,その氷の上空3150メートルの空気を1℃あげるだけの熱と同じということが分かる。
さらにこの1グラムの水を40℃まで暖め,そこで蒸発したとすると,先ほどの90に40と590(蒸発に要する熱)を加えるので,720になる.これに3500をかけて100で割ると,25200メートルという数字になるが,大気が濃い高さは5900メートルぐらいしかないから,結局,4.3℃という数字が出てくる。
ややこしい話になったが,結局,次のようなことが言える。
「たった,1グラムの氷を融かして40℃でゆっくり蒸発させると,その氷の真上にある上空までの大気を4.3℃も暖めることができる」
ということだ.
水の温度を上げたり,氷を溶かしたり,まして水を蒸発させるのがいかに大変かが分かる。
北国に行くと,前の日の朝はマイナス20℃だったのに,今日はマイナス5℃というようなことが多く,一日で15℃も変わるけれど,暑い国に行くと,今日が35℃だったが,明日が50℃と言うことはない.
これはお風呂を見ていると分かるけれど,40℃ぐらいから急に「湯気」が立つ。つまり蒸発するようになり,地表の熱がドンドン奪われるからだ.
この計算はさっきと逆だから,1グラムの水が蒸発すると,590×3500÷100÷5900=3.5,つまり上空の空気を3.5℃も冷やすことになる。
・・・私はこの手の計算に慣れているが,あまり普段は計算しない人には頭が痛くなったことだろうから,この辺で,お風呂に入ってゆっくりして,立ち上る湯気で見て,一日の疲れを癒して欲しい。
(平成21年2月25日 執筆)